「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第57回:個性の連係(名経大高蔵高:牛尾颯太、竣太)
ゲキサカ / 2017年8月13日 8時0分
“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」
打つべきか、打たざるべきか。双子の兄弟は、胸の内に異なる思いを秘めていた。
平成29年度全国高校総合体育大会(通称:インターハイ)のサッカー競技大会に初出場した名経大高蔵高(愛知)は、ボールの回りに複数の選手が密集してコンビネーションを多用する攻撃が特徴的だった。
全国大会の雰囲気に慣れた20分過ぎから持ち味を発揮。左FWの牛尾竣太らがドリブルやパスでスイッチしながら、じわじわと攻め込んだ。決定的なチャンスは、2回。18分に主将の牛尾颯太が放ったミドルシュートが惜しかった。28分に訪れたのは絶好機だった。3バックの左に入った平井遥登がパスを出しそうで出さないドリブルでスルスルと相手を抜き去って、GKと1対1になったが、右足ですくい上げるように放ったループシュートは、枠を外れた。
結果論になるが、この時間帯にもっとシュートを打ってゴールを奪いたかった。しかし、ボールを持ってたくさん仕掛け、最後まで崩したいという思いもチームにはある。双子の牛尾兄弟は、意見の食い違いを見せた。弟の竣太は「打たないチームで有名なので」と笑ったが、兄の颯太は「打てば、もっと楽だと思うんですけどね。僕は、見ていて、打ちたかったんです。だから(ミドルを)打ちました。打ったら入りそうじゃんと思った。でも、前のみんなは打たないから……。はよう(早く)打て、と思っていました」と少し口を尖らせた。隣にいた竣太は「恐縮です」と気にもかけていなかった。
ひとくちに「つなぐサッカー」と言ってしまえば、それまでだが、2人の個性がプレーに出ていたように機械的ではなく、見ていて面白かった。しかし、後半早々に失点を喫し、退場者が出たことで反撃ムードを断たれた。彼らは、磨いて来たサッカーが通用する喜びと、大舞台で見てもらえる楽しさを感じた一方で、勝ち上がるための課題も突き付けられた。
弟の竣太は「ドリブルが少しずれたらすぐに体を寄せて来る強さとかは感じた。でも、股抜きとか1対1のちょっとした駆け引きも全国大会で通用するんだなと思った」と話し、兄の颯太は「冬もまた全国に出て、もっといろいろな人に見てもらえて、もっと勝てるように成長したいと思いました」と大会を振り返った。
夢に近付くほど、課題は増えていく。今後は、県大会でもマークされる。双子の牛尾兄弟を擁する名経大高蔵は、冬の大舞台でも観衆を沸かすことができるだろうか。楽しみだ。
■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」
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