「スポーツライター平野貴也の『千字一景』」第61回:海を渡って味わった「選手権」(キム・トヨン=駒大苫小牧高)
ゲキサカ / 2017年11月1日 8時19分
“ホットな”「サッカー人」をクローズアップ。写真1枚と1000字のストーリーで紹介するコラム、「千字一景」
今年も「選手権」の季節になった。各地で続々と全国大会出場校が決まっていく。年末年始に行われる全国高校選手権は、日本サッカー界の風物詩だ。第96回を迎えた歴史のある大会は、ファンにとっては存在して当たり前のものだが、かなり特別な大会だ。
北海道予選の準決勝で敗れた駒大苫小牧高は、韓国人の3年生キム・トヨンがキャプテンマークを巻いて戦っていた。優勝した旭川実高との試合は接戦だったが、後半終了直前に点を奪われて夢破れた。目標に届かなかった悔しさを味わいながらも、彼は「負けてしまったけど、3年間、楽しかったです」と日本での高校サッカー生活を振り返った。なぜ日本の高校サッカーを進路に選んだのか、選手権をどのように感じたのか聞くと、こう答えた。
「日本でサッカーをしたかったんです。日本の高校生は、みんな本気。韓国よりチーム数も多くてバチバチやり合っている。自分も一緒にやりたいと思いました。韓国の場合は、リーグ戦をやって上位チームが優勝を争います。日本の高校選手権は、小さい町から勝ち上がって来たチームが戦って、たった一つの優勝チームを出す大会。トーナメントだから、リスクが大きい。でも、全員が同じ方向に向かって一つになって戦うので、すごく楽しい」
日本の部活動は、独特だ。教育の一環と言いながらも、特に人気のある競技や、学校が注力している競技の場合は、プロさながらに熱を入れて育成や強化に取り組んでいる。全校応援も珍しくない。歴史があり、全国放送されるという伝統を持つ高校サッカーの熱気は、トップクラスだ。試合に出られない控え部員の存在や、トーナメント戦による燃え尽き症候群など問題を抱えてきた大会でもあるが、技量に関わらず挑戦権があり、誰でも大きな夢を追うことができるという環境は、貴重だ。
韓国のソウルにあるSKKというクラブの出身で、指導者の伝手を頼って北の大地にやって来たキムは「1年生のときは言葉が分からないし、生活に慣れなくて疲れてしまっていました。でも、1回も(日本に来たことを)後悔したことはないです。2年生の冬に、このチームを自分が引っ張りたいと思って、副主将をやらせてもらいました」と一つの挑戦の終わりに胸を張った。卒業後は、九州の大学に進学予定だ。日本でJリーガーになることが目標だという。海を渡って挑戦した選手権を終えた彼の顔には、夢を追って一生懸命になれた充実感がにじみ出ていた。
■執筆者紹介:
平野貴也
「1979年生まれ。東京都出身。専修大卒業後、スポーツナビで編集記者。当初は1か月のアルバイト契約だったが、最終的には社員となり計6年半居座った。2008年に独立し、フリーライターとして育成年代のサッカーを中心に取材。ゲキサカでは、2012年から全国自衛隊サッカーのレポートも始めた。「熱い試合」以外は興味なし」
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●【特設】高校選手権2017
スポーツライター平野貴也の『千字一景』-by-平野貴也
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