[MOM2284]上田西GK小山智仁(2年)_絶望から這い上がった守護神。戦いたかった市立長野を倒して全国へ
ゲキサカ / 2017年11月5日 7時5分
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.4 選手権長野県予選決勝 市立長野高 1-2 上田西高 松本平広域公園総合球技場]
ピンチを救ったのは、絶望から這い上がった2年生の守護神だった。第96回全国高校サッカー選手権長野県予選は4日に決勝戦を行い、上田西高が2-1で市立長野高を下し、12年ぶり2回目の全国大会出場を決めた。
前半に2点をリードした上田西が逃げ切れたのは、後半の立ち上がりに訪れたピンチをしのげたことが大きかった。後半5分、縦パスに抜け出した相手のシュートを、GK小山智仁(2年)が横っ跳びでセーブ。小山は、その後も何度となく訪れるスルーパスによるピンチを前に出て防いだ。
後半25分には、前に出て触ったボールを味方との交錯でファンブルしてしまい、慌ててカバーしようとした味方DFが相手を倒してPKとなり、1点を返されるというミスもあった。だが、鋭い飛び出しがなければ、そもそも危なかった場面だった。主将のDF大久保龍成(3年)が「2年生だけど、思い切りやってくれた。今日は、アイツがいなければ勝てなかった」と称えたように、小山の好守は大きかった。
小山にとっては、何としても勝ちたい相手との試合だった。今季はレギュラーとして活躍しているが、インターハイ(全国高校総体)の予選では、市立長野高との準決勝で起用してもらえなかった。小山は「あのときは、どうしても市立長野に勝ちたいという気持ちが強過ぎて、練習でまともにプレーできなくなって、コーチから『お前、おかしいぞ』と言われました。ただ、試合に出られなくてすごく悔しかったです。あれからメンタルトレーニングも積んで来ました」と夏の出来事を振り返った。
心身のバランスを崩すほどに、市立長野と戦いたかったのには理由がある。白尾秀人監督は「小山は、自分から声を出して3年生の中に入って行ける選手。中学時代は、AC長野パルセイロの育成組織にいたけど、3番手で試合に出られなかった。対して、相手は同じチームのエリートだった選手ばかり(先発11人中9人がパルセイロ出身)。そういう点でも一生懸命にやっていました。インターハイ予選では気持ちがぶれてしまうところがあって起用できなかったのですが、今日は落ち着いてプレーしていましたし、成長を感じました」と守護神を評価するとともに、小山が市立長野に対して特別な闘志を持つ理由を明かした。
小山は、仲間と異なる進路を選び、地区リーグ、県3部、県1部と実戦感覚を取り戻しながら戦う舞台のカテゴリーを上げて這い上がって来た。試合を2-1で勝ち切ると「後半の最初に攻め込まれていたけど、ピンチを止めれば、もう一度こっちに流れが来ると思いました。自分のミスで失点したのは悔しいけど、決勝で市立長野に勝てたことが嬉しい。自分の選んだ道は間違っていなかった」と笑顔を見せた。
中学時代の苦しみを乗り越えた努力が報われた。なにしろ、小学生時代は評価が高く、パルセイロにも1番手の評価で入ったのに中学時代は3年間で数えるほどしか公式戦に出場できなかったのだ。何度もサッカーを辞めようと考えた。しかし、上田西への進学を機に這い上がって来た。
楽しさを取り戻した小山は「中学時代は、どうせ試合に出られないと気持ちが腐ってしまっていた部分もあった。でも、上田西に来てからは、何でも100%でやれるようになった。成長できたと思う」と嬉しそうに話した。次は、全国大会だ。1対1に強く、チームに流れを持って来る選手を目指す守護神は、さらなる飛躍を狙う。
(取材・文 平野貴也)●【特設】高校選手権2017
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