卒業後は別々の進路…“兄弟V”で前育に悲願を、田部井悠「笑って終われるように」
ゲキサカ / 2018年1月7日 1時12分
[1.6 全国高校選手権準決勝 上田西1-6前橋育英高 埼玉]
兄弟で日本一まであと1勝だ。2大会連続の決勝進出を果たした前橋育英高(群馬)のMF田部井悠(3年)は「ここが今までやってきたスタートライン」と言い切る。前回大会の決勝は青森山田(青森)に0-5の大敗。当時2年生で先発していた田部井悠にとっては忘れられない記憶だ。
「準決勝に勝って満足していたら1年間やってきたことが台無しになる。(決勝では)緊張もすると思うけど、緊張感を楽しみながら自分たちの力を出したい」と、6得点の大勝にも気を緩めることなく、悲願の初優勝へ気持ちを切り替えた。
前半24分に左CKから先制点をアシストした。右足のプレースキッカーはキックの前、コーナーアークぎりぎりに置いたボールを3度置き直した。「CKを蹴るときは(ボールの)プーマのロゴを蹴るように置いている。そこが動くとブレる」。繊細な感覚は「ルーティーン」の一つで、「ボールの空気穴を上にしたり、そういう目印をつくるようにしている。そこがピタッと合うと、狙いどおりのキックを蹴れる」という。
先制点の場面もニアサイドにピンポイントのボールを入れ、DF松田陸(3年、G大阪内定)が頭でそらすようにファーサイドに流し込んだ。「松田陸はニアに入るタイミングがいい。あとは自分が合わせるだけ。自分のキックとあいつのタイミングがうまく合った」と胸を張る。
田部井悠の正確なキックは決勝でも大きな武器になる。今大会無失点で決勝まで勝ち上がってきた流通経済大柏(千葉)に対し、「カギになるのはセットプレー。自分のキックで試合を決められるようにしたい」と誓う。今季、流通経済大柏とはプリンスリーグ関東で2回、夏の全国高校総体でも準決勝で対戦。プリンスリーグ関東では2戦2勝だったが、全国総体準決勝は0-1で敗れた。「リーグ戦とトーナメントは違う。一発勝負で負けたのは自分たちの力不足」と、リーグ戦での2勝よりも総体での敗戦が脳裏に焼き付いている。
双子の弟でもあるキャプテンのMF田部井涼(3年)は3日の3回戦・富山一戦(1-0)で右膝上を打撲し、前日5日の準々決勝・米子北戦(3-0)に続いて欠場した。山田耕介監督は「米子北戦が終わった段階で決勝に向けて調整しようとなった」と明かすと、「(負傷から8日の決勝まで)4日間ある。日に日に良くなっているし、明日の練習でやってみて問題なければ出したい」と、決勝での先発復帰も示唆した。
双子の兄も「たぶん(田部井)涼は出られると思う。心配はしていない」と太鼓判を押す。高校3年間の集大成は、2人がチームメイトとして戦う“最後”の大会でもある。卒業後は田部井悠は早稲田大、田部井涼は法政大に進学予定で、別々の進路を選んだ。「小中高とずっと一緒だったけど、大学では離れる。これが最後になるし、涼だけでなく、みんなで笑って終われるようにしたい」。泣いても笑っても田部井ツインズの“ラストゲーム”。前橋育英に悲願の初優勝をもたらす兄弟Vで有終の美を飾る。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 西山紘平)
●【特設】高校選手権2017
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