ロシアW杯終了。大会を2つの意味で象徴していたクロアチアのハンド
ゲキサカ / 2018年7月19日 7時10分
フランスが2点目となるPKを獲得したCKは、2つの意味でロシアW杯を象徴するシーンでした。
まずは、今大会はセットプレーが得点の大部分を占めていたこと。セットプレーの流れからの得点を含めると、全ゴールの半数を越えていたほど、セットプレーが今大会のトレンドでした。逆を言えば、セットプレーをいかにしのぐかが、勝利へのカギを握るわけです。
クロアチアは驚異的な粘り強さを見せられるチームですが、唯一とも言える弱点がセットプレーの守備の甘さにあります。決勝トーナメント1回戦から決勝までの全4試合で、セットプレーから失点しています。PKの判定となった場面では、イバン・ペリシッチの対応が遅れていることが、ハンドの要因となっているんです。
ペリシッチのハンドは故意ではなかったように見えたが、手に当たったことでボールの軌道が変わり、手でプレーを妨げた。主審はそういう解釈をしたのだと思います。
クロアチアには確かにスキがあった。W杯で頂点に立つようなチームには、あってはならない“甘さ”が存在していたことは、見逃せません。
VAR導入で
“最善の方向”へ
そして、ロシア大会を象徴するトピックと言えば、VARの導入です。ゴールラインテクノロジーは、前回ブラジル大会から使用されていましたが、判定の助けとなる新たなテクノロジーが採用されました。VAR判定の末にPKが与えられた場面が大会中に何度もあり、フランスの今大会初ゴールはVAR判定の末に獲得したPKからでした。
ゴールの有無、PK判定、一発退場の判定、警告や退場の人違い、この4つのシーンで適用されているわけですが、重要なのはVARが決定しているわけではなく、あくまでジャッジは主審に委ねられるわけです。映像を確認して、主審が最終的な判定に至る。
決勝でいえば、クロアチアが同点に追いついてから数分後にフランスにPKが与えられました。クロアチアからすれば、自分たちに流れがきた後でのPKの判定になったわけですが、クロアチアの対応は見習うべきものでした。
サッカーには、W杯のような世界大会から小さな街で開催されている大会まで、同じ競技規則に則ってルールが適用されています。監督やキャプテンは、審判と審判が下した判定をリスペクトする責任があるわけです。フランスの1点目のきっかけとなったFK、そして2点目のPKの判定。クロアチアのズラトコ・ダリッチ監督とキャプテンのモドリッチは、執拗に抗議をすることなく、素直に認めて試合を円滑に進めるという競技規則の精神に則ったわけです。
監督や選手の心理を察すると、「あれだけいろいろな角度から検証されているのなら」と納得できた部分はあると思います。それは、ハンドだと主張するフランスにとっても、ハンドだと判定されたクロアチアにとっても、です。
VARの導入によってベストではないが、最善の方向に近づいている。そう感じさせられたロシアW杯でした。
(取材・文 奥山典幸)★日本代表など参加32チームの最新情報をチェック!!
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