「光を知らない」。ブラサカ日本代表候補・丹羽が目指す「人生の輝き」
ゲキサカ / 2018年9月17日 7時22分
ブラインドサッカーの東日本リーグ第2節が3試合行われ、日本代表候補に選ばれているfree bird mejirodaiのFP丹羽海斗が後半7分、日本代表の守備の中心的存在でVivanzareつくばのFP佐々木ロベルト泉をかわして決勝ゴール。視察に訪れた日本代表・高田敏志監督の前で猛アピールした。
「決まったシュートは右足のインサイドで(ジャストミートせずに)チョオチョロで、決してきれいなシュートではなかった。シュートそのものに納得しているわけではないけど、ゴール前であきらめることなく打つことができたことはよかったと思います。監督にアピール?アハハ(笑)。普段の水準をもっとあげないといけない。1点決めたからといって、よかったわけではないですよ」
163㎝、57㎏。佐々木とは身長で9cm、体重で15㎏も差がある。それでも、1対1になって体をぶつけられても、佐々木の強さに屈することなく前に出られた。日本代表合宿でもアドバイスを送るという佐々木は試合後、「mejirodaiの選手はよく走っていた。ニワ君もよく頑張っていたし、結構いい選手だと思う」。この日、8、9日の代表合宿に参加できなかった丹羽と佐々木を主に見に来た、という高田敏志監督も「(丹羽は)認知能力が高い。彼の一番いいところは人間性。自分に何が必要か、という向上心を持ち続けている。今までもずっと呼んできたけど、これからも見ていきます」とさらなる成長に期待した。
丹羽は筑波大学付属視覚特別支援学校に学ぶ20歳。網膜のガンにより、生後半年で両目とも失明した。
「右目は義眼で、視力も光覚もない。見たことはあるのかもしれませんが、脳の中に記憶がない。だから『色』のイメージがないんです。『じゃあ、いつも真っ暗なの?』と聞かれることもありますが、僕の中では『暗い』『明るい』の概念すらないんですよ」
ただ、丹羽の受け答えはとても明るい。鍼灸師の資格を目指し、来年2月に国家試験を受ける準備をしており、学業を優先するため、代表合宿の参加は見合わせた。理由はそれだけではなかった。
ハキハキした受け答えをする丹羽
「この試合にチーム本来のメンバーでのぞむことができないことが(事前に)わかっていました。日本代表でも監督、コーチ、それ以外のスタッフの方にもお世話になっていて自分を見てくれているのはありがたいんですが、一方でこうして僕が今、サッカーができているのは、(筑波大学付属特別支援学校の)中等部の先生が2年前に誘ってくださったから。free bird の緊急事態でもあったので、今回はチームの活動を優先させてもらいました」
幼少期からスポーツは大好きで、高校時代まで野球選手。同2年生の時はエースとして全国大会優勝に貢献した猛者だ。サッカーのキャリアはこの9月で2年たったばかりだが、それを補うハートの強さが丹羽にはある。
「自分は体も大きくないし、アスリートとしては不完全です。その中でもできることは、『心』で負けないこと。1回あたり負けても、また追いすがっていく気持ちです。心が折れちゃうとすぐに体が弱くなっちゃいます。 今、代表合宿にも呼んでいただき、チームでも出番をいただいてサッカーをすごく楽しませてもらっています。代表に選ばれている以上、それ相応の行動をしたいですし、2020年のピッチには立ちたいです」
日本代表が目指しているのはパラリンピックの金メダル。4年に一度の大舞台で世界一の「重み」を感じるために丹羽は今日も、ひたむきに走り続ける。
(取材・文 林健太郎)
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