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[アンプティW杯直前特集]「右足がなくても不満はない」。日本代表のエース・エンヒッキを覚醒させた”初体験”

ゲキサカ / 2018年10月25日 19時41分

躍動感があるエンヒッキ松茂良ジアス(中央)

 下肢や上肢に切断障害のある人がプレーするアンプティサッカーのワールドカップ(W杯)が日本時間の28日に開幕する。本日から3回にわたり、代表主力選手の横顔に迫る。第1回は19歳で来日し、競技が存在しなかった日本にアンプティサッカーを広めたパイオニア、ブラジル出身のエンヒッキ松茂良ジアスだ。

 日本時間29日の初戦・コスタリカ戦を迎える日本代表は無事に開催国メキシコに入った。エンヒッキは2007年はブラジル代表に選ばれ、日本代表としても2010、2012、2014年に続く4回目の出場。5歳で交通事故にあい、意識が戻ったときには右足が切断されていたエンヒッキには、変わらぬ思いがある。

「小さい頃に事故にあっている分、心の半分以上は『人生はこんなもんじゅないかな』とか『足がないのは当たり前』みたいな感覚なんです。『もし足があれば……』ということをよく聞かれますが、できないことがほとんどない。だから、足がなくて特に不満はないんですよ。たとえば、僕はサッカー以外にスキーもできますし、昔の話ですがクラブに行って踊りもしたことはある(笑)。だからマイナスに考えたことはないんです」

 そう語るエンヒッキも、最初からこんな前向きだったわけではない。事故にあった4~5年後に起きた初体験が転機となった。

「僕は長男で、5歳で足を切断した。そうなると母が何でも心配してくれました。たとえば、家の近くのパン屋に行くときでも、道を2回横断する必要があった。そうなると母は『道を渡らなければいけないから、一緒に行こう』と言ってくれるんですが、ある時、親戚のおばさんが『1回ぐらい、ひとりでいかせたら』と言ったんです。僕が9歳か10歳ぐらいの話だと思います。実際、初めてひとりで行って帰ってこれて『ああ、いけるんだね』と母は安心した。結局、周りのほうが自分以上に心配してくれているんです」

 ”ブラジル版はじめてのおつかい”で意識が覚醒したエンヒッキは「僕以上に他人の助けが必要な人もいるので、ここからは個人的な意見です」と前置きした上で、こう続ける。

「(障がいを抱えた人に)もしトライさせたいことがあるならば、早めに何でもさせたほうがいいと感じています。どこまでできるかは、やらないとわかりませんから。僕自身は『片足だとできない』とは考えず、『片足でやってみたらどうかな』という感じでトライして『やってみたらできた』という自信の積み重ねでここまで来た。そうできたのは言うまでもなく、家族の支えのおかげです」。

 日本代表は過去最高のベスト4を目指す。今まで、トライすることで人生を切り開いてきたエンヒッキは、単なる夢物語で終わらせるつもりはない。      

(取材・文 林健太郎)
●障がい者サッカー特集ページ

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