FC今治オーナー岡田武史の告白(上)「経営者は日本代表監督より苦しい」
ゲキサカ / 2018年11月16日 11時37分
壮大な夢を描いても、地元の方には最初、受け入れていただけませんでした。オーナーになった当初はJ3の2つカテゴリーが下にあたる四国リーグにいて、専用スタジアムはありませんでした。試合のときだけ仮設シートを用意する2000人収容の運動公園だけでした。J3昇格条件にある観客動員の平均入場者数2000人を目標にしました。街中でビラをくばり、講演して回り、ありとあらゆることをして雨が降っても満員にしたかった。でもダメでした。2017年9月に5000人収容の「ありがとうサービス.夢スタジアム」で最初の試合をするまで、平均入場者数が1200人を割るほどでした。
当時6人だった社員が毎晩のように会社に戻って必死に議論していました。ふと私は頭に浮かんだ疑問を、スタッフに投げかけました。
「ここに来て2年になるけど、今治人の友達いるか?」
誰もいなかったんです。東京など外部から今治に来て、FC今治内のスタッフで話し合い、メシを食い、酒を飲んでいた。私たちが街に出ないといけなかったんです。
そこで「残業は午後8時まで」「友達5人作らないと罰金」というルールを作る地道な活動からはじめました。今治は古くから野球の街なので、昔、子供たちに野外体験教育をさせたいと考えてサッカー教室をしても、集まらない。そこで元ヤクルト監督の古田さん(敦也)を呼んで野球教室をしてもらったこともあります。
サッカー場に2000人来てくれたとしても、純粋にサッカーを見に来るのは200~300人ぐらい。ですからスタジアムに来たらワクワクしてもらい、そして新しい絆ができる催し物を提供したいと考えました。スタジアムの広い駐車場にステージを作り、クラブスポンサーである吉本興業のタレントさんに来てもらったり、フードコートを充実させたり、小さなワクワクをたくさん散りばめたフットボールパークを意識しています。
2016年11月、JFL昇格を決めた直後
その夢スタジアムの開幕戦は2017年9月10日。その前夜、監督時代には感じたことないぐらいドキドキしました。すると、開門3時間前に300人近くの人が並んで待ってくれた。結局、キャパオーバーの5241人の来場を記録し、シートが足りなくて、ピッチにパイプ椅子を置かなければならない状況になりました。
弊社には、うれしいことがあるとスタッフが記入するネット上の「ハッピーノート」というものがあります。女性スタッフがこんなことが記していました。
「開幕戦のとき、ゴール裏で泣いている女性がいました。心配して『大丈夫ですか』と聞くと、『3年前、岡田さんがきたときは、みんなネガティブだった。どうせ、有名人が来て、チョッチョッとやって、(東京へ)帰るんだろ、と。私も否定的だった。でも3年後、こんな姿が今治で見られてうれしい』と言って泣いておられたんです」
それを目にしただけで、今まで苦しかったことがすべてがふっとびました。去年の最終戦は、もうJリーグににあがれないことが決まっていたのに3000人のお客さんに来ていただいた。私は全員をお見送りさせていただきましたが、ほとんどの人が「楽しかったよ」「また来るよ」と言ってくださった。サッカーがわからなくても、来て楽しかったよと言っていただける場を作ろうという目標を達成できたような実感がありました。
皆様にようやく認めていただけるようになったのは今年です。4年かかりました。だから何とか今年、J3に上がりたい。ただ、そういった感情的な側面だけが理由ではありません。「仏の顔も3度まで」ということわざがあるように、もしJリーグ昇格を今年逃したら、これまでご支援いただいたスポンサーが離れる危機感も経営者として感じています。そこで私はある思い切った決断をしました。(明日に続く)
(構成 林健太郎)
-
- 1
- 2
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【J1】町田・黒田監督 東京Vと昇格組ダービーで東京勢ライバル連破へ闘志「勝って一番と知らしめる」
スポニチアネックス / 2024年5月17日 19時31分
-
「FC今治」営業・マーケティング職の求人募集を開始、昨年採用の5名は4職種で活躍中
@Press / 2024年5月15日 14時0分
-
【JFL第8節プレビュー】7連勝高知の絶対的堅守をV大分は破れるか…栃木CvsV三重のワクワク上位対決、悩めるHondaと新宿の激突
超ワールドサッカー / 2024年5月3日 17時50分
-
岡田武史氏 引退表明の長谷部誠の〝今後〟に期待「これからは指導者として」
東スポWEB / 2024年4月23日 16時54分
-
J3今治の本拠地が5月から「アシックス里山スタジアム」に、略称は「アシさと」
ゲキサカ / 2024年4月23日 14時16分
ランキング
-
1宮田笙子、NHK杯13年ぶり3連覇で初五輪切符 岸里奈、岡村真、中村遥香が五輪代表決定
スポーツ報知 / 2024年5月18日 16時12分
-
2巨人・坂本勇人「いい感じで打てました」 “ミスター超え”187度目猛打賞
スポニチアネックス / 2024年5月18日 19時32分
-
3レーバークーゼンが歴史的快挙!ドイツ1部史上初シーズン無敗優勝達成 クラブ初の“欧州3冠”へ弾み
スポニチアネックス / 2024年5月19日 0時28分
-
4「やっぱ持ってる」大谷翔平、“記念日”に自ら祝砲!「日本も早くしないとな。アメリカに先越されとるで」
スポーツ報知 / 2024年5月18日 13時56分
-
51014億円男・大谷翔平が生んだ“今季最高”の光景 米国でも話題沸騰「大金が支払われた理由」
THE ANSWER / 2024年5月18日 19時33分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください