青森山田GK飯田雅浩、PK戦前に僕が正座をする理由
ゲキサカ / 2019年1月13日 1時25分
[1.12 選手権準決勝 尚志高 3-3(PK2-4)青森山田高 埼玉]
独特なルーティンだった。PK戦までもつれた準決勝・尚志戦。青森山田高(青森)のゴールを守るGK飯田雅浩(3年)は相手のキッカーがボールをセットすると、自身はゴールマウスに入って正座をしてから相手選手と対峙していた。
前半26分にセットプレーの流れから先制点を献上したものの、下を向くことはなかった。0-1と1点のビハインドを背負ったまま迎えたハーフタイムでは、「あの失点で負けていたら一生後悔する」とキャプテンとして仲間を鼓舞。後半11分にMF檀崎竜孔(3年)、同18分にDF三國ケネディエブス(3年)の得点で逆転に成功し、同23分と同30分にFW染野唯月(2年)にネットを揺らされて再びリードを奪われながらも、試合終了間際の同42分にFW小松慧(3年)の値千金弾で同点に追い付き、勝敗の行方はPK戦に委ねられた。
PK戦前に組まれた円陣。ここで飯田は一つの決意を語っていた。「自分は絶対に2本止める」と――。
後攻となった尚志1本目のDF沼田皇海(3年)は「スカウティングとは逆に蹴ってきた」こともあってネットを揺らされる。その後も当然のように「スカウティングを頭に入れつつ」とキッカーの情報を意識しながら、「自分のことを信じて飛んだ」と自らの直感を信じた。
PKに向かう前に、飯田は儀式のように同じ動作を繰り返していた。相手選手がボールをセットすると、自身はゴールの中に入って正座。その後ゴールラインに立って大きく手を広げて相手のシュートを待ち構えた。この動作をする理由が、3つあった。
まず1つ。正座をして小さくなってから両手を広げることで、「自分の体をゴールラインに立ったときに大きく見せる」ため。そして、2つ目はボールをセットした相手に自分のタイミングで蹴らせるのではなく、「置いた後に蹴られたら相手にペースを持っていかれるので、相手が置いてから自分が正座して時間を作り、自分のタイミングでPKを始める」ため。最後の3つ目として、「大舞台で心を落ち着かせる」ことを挙げた。
すると、青森山田2人目の三國が失敗して迎えた尚志3人目では、相手のタイミングをずらすだけでなくプレッシャーを掛けて失敗を誘う。さらに4人目では、「蹴る直前までどっちに蹴るかは分からなかったけど、最後まで我慢してストップできた」と相手が蹴り出したボールに対して右に飛ぶと、しっかりと弾き出してゴールを守る。宣言どおりに2本を防ぎ、PK戦4-2での勝利へと導いた。
「2年前の廣末陸選手もああやっていた。青森山田の決まりというわけではないけど、(黒田剛)監督からも『廣末もやっていたから、いいんじゃないか』という話があって、本番までやるかは決めていなかったけど、正座をしたのは正解だった」
2年ぶりに辿り着いた決勝の舞台。3年生にとっては最後の試合となる。「自分たちのサッカー人生において、一番の晴れ舞台。今まで支えてくれた監督やスタッフ、そして家族に恩返しできるように、優勝という最高の形で終わりたい」と大一番でもゴールを守り抜き、チームに優勝をもたらそうと意気込んだ。
(取材・文 折戸岳彦)
●【特設】高校選手権2018
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