「ブラインドサッカーが私の癒し」。日本代表・鈴木里佳が23日の世界選抜戦で主将デビュー
ゲキサカ / 2019年2月22日 22時40分
ブラインドサッカーの女子選手の強化と世界的普及を目指して開催される「さいたま市ノーマライゼーションカップ2019」が23日、同市のサイデン化学アリーナで開催される。国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)が構成する「IBSA世界選抜」と戦う女子日本代表は22日、試合会場で前日練習を行い、学業を優先したエース菊島宙やデフフットサルの日本代表GKコーチとしてタイ遠征に帯同中の本多さかえを除いた6選手が参加した。
この試合で主将として初めて出場することになった鈴木里佳は、最終ラインから全体を統率することを期待されている。
「試合が近づくにつれて緊張してくると思います。宙ちゃんに頼り切ってしまうと、彼女にも負担になってしまう。攻撃だけ、とか守備だけとか決めずに、みんなが場面場面で自分の役割を果たせるように声を出していきたいです」
所属するコルジャ仙台ブラインドサッカークラブには、男子の日本代表強化指定選手・佐々木智昭ら、コーチングのいい選手がそろい、特にこの1年は「こういう指示を出したら、こう動いてほしい」というやり取りを重ね、体の動かし方から角度まで細かくアドバイスを受けた。「練習を頑張ったので、手ごたえのある1年でした」という自信をピッチで発揮するつもりだ。
鈴木は先天性無虹彩症という病により、光の調節ができない。その病の合併症の影響で視力も極端に低い。しかし筑波技術大に入学後、ブラインドサッカーを観たことが転機となった。「視覚障害のある人はサッカーはできないものだと思っていましたが、工夫すればできるんだなって思って」
それでも最初は、プレーはしないサポートスタッフだった。本格的にプレーをはじめたのは2017年に女子の日本代表が立ち上がった時期。鈴木は仕事の悩みを抱えていた。
「当時、機能訓練指導員の仕事が忙しくて、人間関係で悩んだり、社会人としてやりたいこともできなくて、ネガティブな気持ちで過ごしていました。そんな中、ブラインドサッカーは、私の中で『癒し』というか、大事な時間でした。そんなとき、『女子の日本代表ができる』という話が来た。『とにかく自分を変えたい』という思いで本格的にはじめたんです」
サッカーの競技性が、鈴木の心の「霧」を少しずつ晴らしていった。
「ブラインドサッカーは声を出さないといけない。伝えないといけない、聞かなきゃいけない。『伝える』って大事なんだなって改めて思いました。本当は良くないことですが、それまでは仕事の中でどうしても、相談できない、報告できないとかありましたが、今では、すごい上司に報告をするようになって、仕事への思いも変わってきました」
前日22日、10か国28人の選手らによる世界選抜の練習にも参加した鈴木は、日本代表のプライドをのぞかせた。
「上手な選手が何人かいて、そのメンバーで来ると思う。1人1人はいい選手ばかりだけど、こちらは2年間、ほぼ同じメンバーでやっている。負けるわけにはいかない」
【女子日本代表選手】(8名)
GK大作眞智子(埼玉T.Wings)
GK本多さかえ(―)★
FP加賀美和子(buen cambio yokohama)
FP菊島宙(埼玉T.Wings)★
FP工藤綾乃(Avanzareつくば)
FP鈴木里佳(コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ)
FP竹内真子(兵庫サムライスターズ)
FP橋口史織(ラッキーストライカーズ福岡)
【注】本多の所属クラブはなし。★は前日練習に不参加。
(取材・文 林健太郎)
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