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「魂は置いていかない」。W杯出場を決めながら、引退勧告を受けたある日本代表戦士の葛藤と決断(上)

ゲキサカ / 2019年4月11日 11時10分

「今の膝の状態を見ていると、これから先はできない。この大会を区切りにしないか? (決勝で)今まで頑張ってきた生き様を最後に見せてほしい」

 直後は「わかりました」としか言えなかった上井は、少し冷静になるとこう返答した。

「僕が最後だから(試合に)使うのではなく、勝つための選択をしてください」

 前回W杯王者のイランとは決勝のわずか5日前に行われた予選でも対戦し、0-4と完敗。世界トップの洗礼を浴びたばかりだった。イランとの再戦は、決勝トーナメントで勝ち上がることで自ら手繰り寄せたリベンジの機会だった。
インタビューに応じる上井一輝
 川元監督は考え抜いた結果、仮に短い時間でも、読みのよさでピンチの芽をつみ、ましてや技術を越えたずば抜けた気迫でチームを引っ張れる上井の存在感に賭け、先発起用を決めた。しかし試合直前のウォーミングアップで再び左ひざを痛め、上井は立っていることすらやっとの状態に陥った。試合開始わずか1秒で交代。“引退試合”は、一瞬ではかなく終わってしまった。上井が振り返る。

「左ひざの軟骨は1か所が大きく無くなっていて、別の箇所も損傷して、骨もダメージを受けていました。(川元)監督から引退を言われたときは、簡単に受け入れることはできなかったし、僕の語彙では表現できる感情ではなかったんですが、監督は去年の6月に痛めてから、僕のことをずっと見てきて決断してくださったんだと思います。けがをしていても呼んでくださる監督の期待にも応えたかったんです」

 すべては世界一のために……。日本代表の偉業のために誰よりもひたむきに努力を重ねてきた上井と川元監督の熱い師弟関係が構築されたのは、前回のW杯までさかのぼる。決勝のイラン-タイ戦を観戦後、会場を出たとき、上井は川元監督にこう質問した。

「4年後、どうしたらこの舞台に立てますか?」

「障がい者スポーツの代表という意識を持っている限り、あのピッチには立てない。ベスト4に残っていたチームは、障がいの有無は関係なく、国を代表するアスリートだ。だから海外でプロになるぐらいじゃないと難しいぞ」

 そのわずか数日後、上井は周囲も驚く、ある行動に出た。(明日に続く)

(取材・文 林健太郎)
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