[MOM3757]大津MF一村聖連(3年)_「小さい頃から憧れていた」ブルー軍団。その歴史を変えた“地元産”ドリブラー
ゲキサカ / 2022年1月5日 9時19分
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.4 選手権準々決勝 大津高 1-0 前橋育英高 フクアリ]
大津高史上初となる選手権ベスト4の扉をこじ開けたのは、幼少期から“ブルー軍団”に憧れを抱いてきた地元産ドリブラーの一撃だった。
0-0で迎えた前半11分、前橋育英高に対して劣勢が続いていた大津だったが、ファーストチャンスで試合を動かした。右サイドで縦パスを受けたMF一村聖連(3年)がFW小林俊瑛(2年)に預けて裏を取ると、リターンパスからペナルティエリア右を突破。角度のないところから右足を振り抜き、ファーのサイドネットに豪快に突き刺した。
「シュートかパスか迷ったけど、6番の薬師田から『打て!』と聞こえてきて打った」(一村)。小学生の頃から同じサッカースクールでスキルを高めてきたMF薬師田澪(3年)の声も頼りに、鮮やかに叩き込んだ先制弾。その時、一村の脳裏には夏の記憶がよぎっていたという。
「インターハイの流経戦でも同じような形で得点していて、そこのイメージはあった。振り抜こうということを意識していた」。一村は昨年夏の総体2回戦・流通経済大柏高戦(○3-0)でも、ペナルティエリア右の角度のないところからチームの2点目を記録していたが、関東の強豪校を相手に見事な“再現弾”となった。
大津はその後、巧みなパスワークを見せる前橋育英を相手に押し込まれる展開が続いたものの、GK佐藤瑠星(3年)ら守備陣が鬼気迫るパフォーマンスを披露。5-4-1へのシステム変更も機能し、最後までリードを守り切って1-0で勝利した。大津にとって4回目の準々決勝挑戦で初めての4強入り。一村のゴールは歴史的快挙をもたらす決勝点となった。
「自分のゴールで勝つことができて非常に嬉しい」。
地元熊本県の甲佐町出身の一村にとって、この喜びはいっそう格別なものだった。地元の名門校は「小さい頃から大津高校に憧れがあって、小学校からのコーチにも大津高校に行くと話していた」ほどの大きな存在。中体連の甲佐中では県大会出場の経験もなかったが、「大津高校に行こうという目標は変わらなかった」という。
そんな憧れのパワーもあり、入学後も努力を怠ることはなかった。「先輩方やクラブチーム出身の選手とはレベルが違っていて、最初はすごく苦労した」と壁にもぶつかったが、「自主練で自分の武器のスピード、ドリブルを反復練習してきた」。その結果、最上級生となった今季は主力を担うまでに成長。いまでも同い年のドリブラーの青森山田高MF藤森颯太(3年)のプレー動画を参考にするなど、謙虚に強みを磨き上げてきた。
今大会でも1回戦・中部大一戦で大会初ゴールを記録し、ここまでの快進撃を牽引してきたが、この働きに満足していなかった。「ここ3試合はドリブルを仕掛ける回数もあまりなくて、クロスの質も全然悪かった。チームに迷惑をかけていた」。そんな自己評価を胸に挑んだ準々決勝で、快挙に導く歴史的ゴールを挙げてみせた。
そんな一村の目標は「全国制覇」。“進化するブルー軍団”をスローガンに掲げる名門校を頂点に導くべく、背番号11はすでに次の舞台を見据えている。4日後に控えるのは栄えある国立競技場での準決勝。「新しい国立競技場で試合をやるということで、まずは試合を楽しむことを意識したい」。そう目を輝かせつつ「目標は全国制覇なので必ず成し遂げられるようにまずは楽しみたい」と力を込めた。
(取材・文 竹内達也)
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