[MOM3908]帝京MF押川優希(3年)_三浦颯太の系譜を引き継ぐカナリア軍団の8番は時空を操るコンダクター

　結果は延長で3ゴールを奪い切っての勝利。「あそこまで延長が上手くいくとは思っていなかったですけど、1点獲れれば守り切れる自信はあったので、本当にみんなに感謝したいです」と口にした8番の存在感が、より高まった100分間だったことに疑いの余地はない。

　実はこの日の試合を会場で見つめていた、ある“先輩”の存在が大きな刺激になっているという。「プロに行くためには何が必要かを聞いたら、凄く優しく教えてくれて嬉しかったですし、練習にも混ざってくれたんですけど、プレーを見て『やっぱりトップレベルはこれぐらいやらないとダメなんだな』と実感させられました。マジで上手かったです」。

　その“先輩”とは、既に大学3年生だった昨年のうちにヴァンフォーレ甲府への加入内定を決めている日本体育大のMF三浦颯太(4年)。帝京では1年時からレギュラーを獲得し、その左足でカナリア軍団を牽引していたレフティは、教育実習で母校へと帰還していたのだ。

「人当たりも良くて、みんなに優しかったです。練習の1個1個のプレーの強度も違って、『これが上に行く人なんだな』ということもみんなが感じたことで、自分たちの強度も上がってきました。本当に凄い人です!この人の8番を受け継ぐのはちょっと荷が重いなって(笑)。もっと頑張らなきゃなって改めて実感しました」とは押川。来年からプロの世界へと飛び込む“先輩”の教えを胸に、さらなるレベルアップへの意欲はより高まっている。

　この日も纏っていた、憧れのユニフォームへのこだわりも決して小さくない。「あれを着られるのはメンバーに選ばれた人たちだけで、その選ばれた人は着る責任があると思うので、黄色のユニフォームに恥じないプレーを心掛けるべきだなと思います。僕は3年前に久我山に選手権予選の決勝で負けた時に、黄色いユニフォームを着て戦っている帝京の先輩たちの姿を見て、『本当にカッコいいな』と思って、自分もあそこでやりたいと思っていたので、今こうやってこのユニフォームを着て、8番も付けさせていただいて、より責任感が出てきています」。

　ゲームに流れる時間を自在に操る男。三浦も背負った帝京の8番を託される押川の振るうタクトには、明らかに今まで以上の凄味が加わっている。



(取材・文　土屋雅史)●【特設】高校総体2022