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市立船橋が流経大柏を撃破して3大会連続の全国舞台へ。スランプに陥っていた久保原心優が“トリプルカウンターアタック”から千金弾!

ゲキサカ / 2024年6月17日 16時25分

 去年の自分を追い求めていた部分とは何か。久保原はこう話す。

「周りに生かしてもらうプレーが自分の武器でもあった。先輩に助けてもらっていたので、今年はそこを比べてしまった」

 久保原の良さは周りに生かしてもらいながら、ゴール前に入り込んでゴールを奪うプレーだ。去年の残像を消し去り、今年のチームメイトと一から連携面を築いていく覚悟を決めたが、ここからが本当の苦しみだった。

 第3節以降も無得点。決定機を決め切れず、頭を抱えるシーンが何度もあった。

「ゴールが入らない。チャンスを作っても決まらないし、打ってもバーとかポストに当たったりして……。運が悪いなって気持ちがありました」

 だが、これで終わるわけにはいかない。エースは気持ちをリセットし、このインターハイ予選に入った。

 すると、翔凛高との初戦で2ゴール。ようやく今季初めて公式戦でゴールを奪い、2-0で勝利したチームに貢献した。これで肩の力が抜けたが、続く中央学院高との準々決勝、東京学館高との準決勝は無得点。大事な局面で結果を残せなかっただけに、流通経済大柏との決勝に懸ける想いは強かった。

 迎えた決勝も相手に主導権を握られ、久保原も前線で孤立。良い状態でボールを受けるシーンが少なく、シュートに持ち込む場面も数えるほど。だが、虎視眈々とチャンスを狙い、確実に仕留めることだけを考えていた。

そして、0-0で迎えた後半13分。その時が訪れる。GKギマラエス・ニコラス(3年)がボールを掴むと、即座に左サイドへ低い弾道のフィードを送り込む。ボールを受けたFW伊丹俊元(3年)が収めると、シンプルにゴール前へ折り返す。ライナー性のボールがファーサイドに通ると、走り込んだ久保原がダイビングヘッドで決めた。

「去年はこぼれ球に詰めて決め切るシーンが多かった。今年はあまりなかったけど、いいクロスが上がってきてこれは来たなと」

 大人気サッカー漫画“シュート”のワンシーンを彷彿させるような“トリプルカウンターアタック”から捩じ込んだ一撃。これぞエースの仕事で久保原の顔も思わず緩んだ。

 20分にCKから失点したものの、33分にセットプレーの崩れから伊丹が決勝点を決めて勝ち切った市立船橋。膠着した状況下で生まれたエースの先制点がなければ、どのような結果になっていたか分からない。

 エースの重責に押し潰されそうになった。シュートを打っても入らない日々は本当に苦しかった。だが、それを乗り越え、精神的にひとまわり逞しくなった。10番はもう迷わない。笑顔を取り戻した男は“イチフナ”のエースとして、ブレずに仲間のためにゴールを重ねていく。
市立船橋は10番FW久保原心優が千金弾
(取材・文 松尾祐希)

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