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「ロス五輪への推薦状」第17回:技巧派アタッカーが気づいた「特別な守備の才能」。興國の2年生MF樺山文代志がボランチで躍動中

ゲキサカ / 2024年6月21日 12時23分

ボランチのポジションで新たな才能を披露している興國高MF樺山文代志(2年)

 2028年ロサンゼルス五輪まであと4年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ

 強豪ひしめく大阪府予選で頂点まで駆け上がり、インターハイ初出場。プリンスリーグ関西1部でも上位争いを繰り広げる興國高のキーマンと言えるのが、MF樺山文代志(2年)だ。

 5歳上の兄・諒乃介(サガン鳥栖)と同じく興國のエースナンバーである14番を背負うが、プレースタイルは異なる。兄は高いスキルとスピードを駆使したドリブルと左右両足から繰り出すシュートが持ち味だったが、弟の特徴は守備力の高さ。セカンドボールの回収とボールハントで力を発揮するタイプだ。与えられるポジションも左サイドを中心に攻撃的なポジションが多かった兄とは異なり、ダブルボランチや4-3-3のシャドーを担う。

 今ではチームに欠かせない存在となっている樺山に転機が訪れたのは今年に入ってから。高校1年目の昨年は攻撃的なポジションで起用されてきたが、入学前からAチームで定位置を掴んだ兄とは違い、陽の目を浴びる機会はなかった。2年目を迎えた今年は、Aチームに昇格したものの、思い通りに出場機会を伸ばせない。

 当時は六車拓也監督との個人面談で自らの特徴を尋ねられると「ドリブル突破」と返していたという。高い技術力を生かした滑らかなボール運びは確かに魅力的だが、指揮官がドリブル以上に評価するのはボランチとしての素質だった。「凄くボールが奪えるし、セカンドボールの回収もできる。それに彼が持っているクイックスネスな部分は攻守においてキーマンになってくると思っていた」。そう評する六車監督は「武器を作れ」と声を掛け、彼の特徴を引き出そうとした。

 本人も強者揃いの興國で1年間プレーし、アタッカーとしての自らの立ち位置に気付き始めていた。「アタッカーとしてならFW安田光翔(2年)やMF久松大耀(3年)など自分より速い選手がチーム内にたくさんいるし、世界にはもっと凄い選手がたくさんいる。将来を考えるとアタッカーではなく、中盤でないと厳しくなると高2で気付けた。守備なら他の選手を上回ることができるかもしれないって」。

 2月に行なったスペインとフランスへの遠征から本格的にボランチに挑戦。速いアタッカーに対する対応に難しさを感じながらも、接触を恐れず思い切りよく球際での勝負に行けばボールを奪える手応えを掴んだ。「一瞬のスピードは得意にしている。感覚で行けるなって思ったら拾いに行っている」。樺山自身の言葉通り、ボールに対する嗅覚と反応の速さは指導者が教えられない天性の物。奪ってからはこれまで持ち味にしていた持ち運びで攻撃にアクセントを加えることもできるため、ボランチとして躍動し始めた。

 天職と言えるポジションと巡り合い、今はやりがいを感じている。「アタッカーもやっていて楽しいですが、中盤はまた違う難しさがあって、やっていて楽しいと思えるようになってきた。今まではアタッカーが良かったけど、最近は中盤でやれていて楽しいので良い感じです」。

 インターハイ予選でもチームを支える効果的なプレーを披露したが、まだまだ伸びしろは多い。「樺山は本当に真っ白な状態なので、毎試合よく吸収して成長してくれている。彼は自分で能力に気付いていない。ただ、ここに来て、少しずつ分かり始めている。まだまだ可能性はあるので、できるだけ上を見せて伸ばしていきたい」(六車監督)。高2の早生まれであるため、廣山望監督率いるU-16日本代表としての資格もある。1度チャンスを掴めば、その成長速度は一気に加速し、代表でも欠かせない選手になるかもしれない。

(取材・文 森田将義)

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