手繰り寄せた最高の歓喜と笑顔。戦列復帰した大津MF中村健之介が自分の中心に据えるチームメイト、恩師、トレーナー、旧友への感謝
ゲキサカ / 2024年12月16日 12時12分
チームは前半45+2分にMF畑拓海(3年)のスーパーミドルで先制。「前半の最後の欲しい時に点が獲れて、ハーフタイムも『行けるぞ!行けるぞ!』という良い雰囲気で後半に挑めました」。1点のリードを得て、より大きな勇気を得たチームメイトとともに、中村も後半のピッチへ飛び出していく。
15分。ピッチサイドに交代を意味する『7』のボードが掲げられる。「個人としては自分の得意なプレーがあまり出せなかったですね」。自分自身の出来にはやや納得がいかなかったものの、残り30分あまりの時間を信頼できるチームメイトに託し、ベンチからピッチを見つめる。
リーグ戦の日常から印象的だった。試合に出ていなくても、チームメイトがゴールを決めた際に、中村は満面の笑みを浮かべてみんなで歓喜を共有する。45+3分。FW山下景司(3年)が勝負を決定付ける3点目を奪い、選手たちがピッチサイドへ向かってくると、この日もその笑顔が明るく広がった。
プレミア制覇には“旧友”たちへの想いも込められていた。中村が中学時代を過ごしたのはサンフレッチェ広島F.Cジュニアユース。当時のチームメイトたちは、1年前の埼玉スタジアム2002で青森山田高に敗れ、日本一を逃していた。彼らからもファイナルを前にして、激励のメッセージが届いていたという。
「今回のこのファイナルに出るに当たって、サンフレッチェユースの仲間からも『頑張ってこいよ』という応援のメッセージをもらって、そうやって素直に友だちを応援してくれる仲間が、大津高校のチームメイト以外にもいるんだという感謝もありましたし、試合前は『去年のサンフレッチェの分まで』という想いで試合に臨みました」。サッカーで紡いできた仲間との輪は、かけがえのない宝物だ。
ユースへの昇格が叶わず、進路先にもいくつかの候補があった中で、「森田大智さんの代の練習に参加させてもらって、言葉で表すのは難しいんですけど、『ここでやりたいな』と率直に思ったんです。『ここで3年間やったらプレーヤーとしても人としても成長できる』と感じたので、大津高校を選びました」と身を投じたこのチームで、まず一冠は成し遂げた。だが、最後の最後の集大成となる選手権の開幕はもうすぐそこまで迫っている。
「もちろんチームとしても二冠を目指してやっていくことになるんですけど、インターハイ明けから『左サイドは個人で行くところが課題だ』と言われていたので、自分が点を獲ったりアシストをしたりという、結果を出していきたいですね。優勝する喜びと自分が良いプレーをできたという喜びと、2つの喜びを味わえるように頑張りたいと思います」。
言うまでもなくチームの勝利が大前提。その上で圧倒的なパフォーマンスを見せて、全国の晴れ舞台で『大津の左サイド』を輝かせてみせる。堂々と頂点に立ったプレミア王者が高校年代二冠を成し遂げるためには、中村健之介の躍動が絶対に欠かせない。
(取材・文 土屋雅史)
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