全5試合、510分間無失点も最後に届かなかった「数センチ」は未来への伸びしろ。C大阪内定の明治大GK上林豪が4年間で積み上げてきた紫紺の日常の価値
ゲキサカ / 2024年12月26日 12時24分
準々決勝で向かい合ったのは、1年にわたってしのぎを削り続けてきた最大のライバル・筑波大。延長も含めた120分間を戦っても決着はつかず、勝敗の行方はPK戦に委ねられる。すると、上林は相手の1人目のキックを気合でストップ。襲ってくるプレッシャーをものともせず、とにかく明治大に勝利をもたらしてきた。
自分と向き合い続けてきた1年だった。これまでのサッカーキャリアを懸けて臨む覚悟を定めていた、大学ラストイヤーとなる今シーズン開幕前に、もともと脱臼癖のあった肩の手術を葛藤の末に決断。短くない時間をリハビリに費やすことになる。
「最上級生で、副主将として、相当な覚悟を持って挑んだ今年だったんですけど、その意欲をくじかれるような形でケガから始まって、『弱い自分を見せないように』という立ち振る舞いは意識してやっていましたけど、やっぱり気持ちをプレーで見せられないことは心苦しかったですし、初めての手術ということもあって、痛すぎて寝れない時もありましたし、その日々を振り返るとやっぱり苦しかったですね」。
チームメイトがピッチで躍動する姿を、眺めることしかできない日々。はっきり言って心が折れそうになったことも、一度や二度ではない。そんな上林を支えていたのは、やはりこの組織で切磋琢磨し続けてきた、かけがえのない仲間の存在だった。
「やっぱり明治への感謝の気持ちが支えてくれました。『明治に恩返ししたい』『後輩に何かを残したい』という感情が強かったので、そういう想いを常に持ちつつ、『自分に何かできることはないか』と思いながら、日々を過ごしていました」。
「特に支えになったのは主務の藤本颯真(4年=神戸U-18)の存在で、彼が自分の置かれた立場の中で、心の底から尊敬できるぐらい明治のために動いてくれる姿を見て、自分もケガをしているからといって、折れているわけにはいかなかったですし、そういった同期の想いや姿を見て、奮い立たせられるところはありましたね」。
戦列に復帰したのは9月の総理大臣杯。以降はそれまでバトンを繋いできてくれた藤井陽登(3年=矢板中央高)や韮澤廉(4年=青森山田高)をはじめとしたGK陣への感謝を胸にゴールマウスへ立ち、それまで蓄えてきたエネルギーを存分に解き放ちながら、チームの結果に貢献し続けてきた。
日本一だけを見据えて臨んだ、大学最後のインカレ。明治大の守備陣はグループリーグの3試合をいずれも完封で勝ち上がると、準々決勝も準決勝もクリーンシートを達成。実に5試合、510分間にわたって無失点を貫いたが、最後はPK戦での敗退。一度もゴールを奪われることのないまま、大会を去ることになった。
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