「来年はSBとして選手権に…」決意から1年、CBとして前橋育英の優勝を支えたDF鈴木陽
ゲキサカ / 2025年1月14日 16時30分
[1.13 選手権決勝 前橋育英高 1-1(PK9-8)流通経済大柏高 国立]
昨年度の選手権をスタンドから見ていた前橋育英高(群馬)のDF鈴木陽(3年)。思い描いたものとは異なる未来が待っていた。
「去年の今頃は『来年は絶対サイドバックで選手権に出てやる』って思っていたので、センターバックで出るのは想像していなかったです」
全6試合でフル出場を果たし日本一をつかんだセンターバックは、誇らしげに語ったーー。
埼玉県にあるジュニアユースSC与野で中学年代をプレーしていた鈴木は、隣県の高校へ進学することになる。「プレミア(リーグ)のチームから声がかかったので、行くしかないと思いました」。家族に相談し、寮生活での高校進学を決める。当時は、サイドバックとしての入学だった。
「ずっとサイドバックだったんですけど、高2のプリンスリーグで5試合ぐらいセンターバックで出て、その後に怪我とかが重なってサイドバックに戻ったんですけど、今シーズンの初めのほうからプリンスリーグで3バックの真ん中で使ってもらうことができて、そこからはセンターバックでやってやろうと思っていました」
今夏にAチームに入った鈴木は、9月7日の昌平戦でプレミアリーグデビュー。以降は先発に名を連ねた。
自信を深めて臨んだ選手権。2回戦、3回戦では2試合連続で2点差を追いつかれ、守備の選手としては課題が生まれながらも、チームは勝ち進んでいく。準決勝で今大会初めて先制点を献上していた前橋育英は、決勝でも再び先制点を許してしまう。それでも前橋育英にとって幸いだったのは、準決勝では前半11分、決勝では前半12分という早い時間帯だったことだ。「前の選手がゴールをとってくれる」という信頼は揺らがなかった。
前半31分にMF柴野快仁(2年)のゴールで追いついた前橋育英は、流通経済大柏高(千葉)の強力2トップ、FW山野春太(3年)とFW粕谷悠(3年)にゴールを許さない。最終ラインの鈴木は、細心の警戒をしていた。
「動き出しのところの予測と準備はもうちょい早くしようっていうのと、ハーフタイムに言ったのは、ラインラインコントロールで自分たちが後手にならないように、先手先手でラインを上げたり下げたりしようっていう話でした」
流経大柏の強烈な攻撃陣に対し体を張って守った(写真協力『高校サッカー年鑑』)
1-1のまま延長戦でも決着がつかず、優勝の行方はPK戦に。山田耕介監督が決めたキッカーの順番は、当初はGK藤原優希(3年)が4人目だったという。しかし、藤原が「止めることに専念したい」と11人目への変更を直訴したことで、6人目だった鈴木が5人目に繰り上がった。
先行の流経大柏が5人全員成功させた中で、後攻の前橋育英は5人目の鈴木にまわってくる。外した瞬間に準優勝が決まる局面だった。「PK練習で2回外したのが、両方左に打っていて。同じ助走の形から左に打って、両方とも止められたんで、逆をつくイメージで右に切れば入るかなと」。鈴木の予期したとおり、GK加藤慶太(3年)は左に飛んだ。「コースは甘かったですけど、入ってよかったです」。鈴木は大役を務めて味方につなげると、10人目で雌雄は決した。
最後の冬の舞台で日本一という肩書きを得た鈴木は、卒業後は関西方面の大学でサッカーを続ける予定だ。「将来はプロになりたいです」。ピッチ上での鋭い表情から一転、柔和な表情を見せた。
(取材・文 奥山典幸)
●第103回全国高校サッカー選手権特集
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