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「彼らの良き理解者であり、良き道先案内人でありたい」 流経大柏・榎本雅大監督と選手たちが晴れ舞台で示した『新しい流経』を創り上げる覚悟

ゲキサカ / 2025年1月14日 20時47分

試合直前。決戦に臨む稲田斗毅と握手を交わす榎本監督

 今回の選手権で活躍が光った選手たちは、決して1年を通じて順風満帆な時期を送ってきた選手ばかりではない。チームトップの4得点を挙げて攻撃を牽引し続けたFW山野春太(3年)も、プレミアではわずか5試合の出場で無得点。全試合でキャプテンマークを巻いたDF佐藤夢真(3年)が夏まで主戦場に置いていたのはBチーム。準々決勝で3得点に絡んだDF渡邊和之(3年)は、その試合が今季のAチーム初スタメンだった。

「さまざまに試行錯誤をしながら、選手にとって何がいいか、選手の成長をどうしたら促せるかということに取り組んできました。そういう部分では選手と対話をしながら、今年は今年らしく取り組んできて、非常に選手は成長したと思っていますし、その成果をこの選手権で5試合披露できたということも含めて、高校サッカー界に、またはこのU-18という年代に対して、育成と強化の両輪の重要性ということを、おこがましいとは思いますが、少しは示せたんじゃないかなと思っています」。惜しくもPK戦で敗れた決勝の記者会見場。榎本監督はそう言って、少しだけ胸を張った。

 印象的な光景があった。2年時からエースとして期待を寄せられてきたFW柚木創(3年)は、試合後も涙が止まらない。それを見た指揮官は、そんな10番を優しく抱き寄せる。誰からも「エノさん」と呼ばれ、親しまれる人間性に魅了される人は少なくない。柚木との一連に、エノさんと選手たちが築き上げてきた確かな絆が垣間見えた。




 『新しい流経』を存分に見せ付け、決勝まで勝ち上がった。だが、あと一歩で日本一には届かなかった。今大会を総括して、榎本監督は次のように語っている。「やはり前任の本田先生が“5つの星”を付けましたので、そこに1つでも足していけるようなところに取り組んでいこうと思っていますけれども、今は監督を任せていただいている中で、自分らしく、『新しい流経』をこれからも作っていこうと思いましたし、そういう意味では少し手応えを感じられたのかなと思います」。

「改めて思うのは、この高校サッカーがスポーツの枠を超えて、本当に文化になりつつあるなと。それは素晴らしい最高のもので、まさに日本が世界に誇れるアマチュアスポーツだなと感じています。たくさんの人に来ていただいて、たくさんのメディアの方に取り上げていただいて、たくさんの方に支えられて、この大会は200回、300回と続けていかないといけないものだと思いますし、僕も含めて指導者も、選手たちも、これからもっといいものを作れると思っているので、そこに少しでも力になれればと思っています」。

 以前、榎本監督がポツリと口にしていたことを思い出す。「指導者をやっていて楽しいことなんて一瞬でしょうね。本当に。苦しいですよ。でも、ここから自分の色が出てきて、それを勝負にどう直結させていくかということを、試行錯誤しながらやっていくのが自分らしいのかなあ。やっぱりサッカーからは逃げられないですね」。

 どこまで行っても、答えはない。正解もない。それでもこの高校サッカーの世界で、選手たちと向き合い、自分と向き合い、一歩ずつでも前に進んでいると信じて、今日という1日を紡いでいく。常に『新しい流経』の姿を追い求める“エノさん”と選手たちの飽くなき挑戦は、きっとこれからもずっと、ずっと、続いていく。



(取材・文 土屋雅史)
●第103回全国高校サッカー選手権特集

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