「ここで一回全員に負けといて良かった」。反骨の得点王、FW三鴨奏太(堀越)は成長を遂げて1、2年後に高校選抜候補全員の上に立つ
ゲキサカ / 2025年1月31日 21時3分
[1.28 練習試合 日本高校選抜候補 4-0 U-17日本高校選抜候補]
2年生で獲得した第103回選手権得点王の肩書き。抜群の活躍で堀越高(東京)を選手権へ導いたFW三鴨奏太(2年/FCオーパスワンU-15出身)は今冬、全国大会で注目度をまた上げた。だが、4日間のU-17日本高校選抜選考合宿では終始晴れない表情。合宿終了後には「悔しい」の言葉を連発していた。
三鴨は東京都予選で8ゴールを挙げたのに加え、準決勝は左足からのスルーパス、決勝では左足クロスでいずれも絶品のアシスト。利き足の右足、また左足からでも質の高いキックを繰り出すほか、状況に応じて巧みに使い分けるファーストタッチ、推進力も魅力になっている。
選手権では津工高(三重)との初戦で1得点を挙げると、松山北高(愛媛)との3回戦では4得点2アシストの大活躍。前橋育英高(群馬)との準々決勝は0-1で敗れたものの、三鴨は得点王に輝き、大会優秀選手にも選出された。
だが、選考合宿では「得点王とか、優秀選手とかっていう言葉が、先走っちゃって、あんまり特長も出せずに、4日間キツイだけで終わっちゃったなって思っています」。各選手がアピールを目指す中では、堀越のようにボールが集まらず、なかなか決定的な仕事をすることができなかった。
選考合宿最終日の日本高校選抜候補戦は3本目に出場。正確な1タッチパス、身体の強さを活かしたボールキープなどでチャンスメイクしようとした。終了間際に左足を振り抜くシーンもあったが、無得点。その後の紅白戦でゴールを決めたものの、気持ちは全く満たされなかった。
選手権敗退後にJクラブへの練習参加を経験。「周りみんな上手いので、やっぱり合わせてくれたりして、そこで勘違いしちゃって……」と三鴨は言う。また、選手主導のボトムアップ方式でチームを構築する堀越の新チームで主将に就任。チームのことを考えるあまり、選考合宿へ向けて準備が不足した部分もあったかもしれない。
ボールに係わる回数も、質も、シュートも、判断も、走力も不足していることを痛感。高校3年生中心の日本高校選抜を見て「みんな凄えな」と刺激を受け、特にU-20日本代表MF布施克真(日大藤沢高)の何でも出来る力や体つきに「化け物だな」と思わされた。
「今は本当に悔しいというか、本当に今にでも帰って泣きたいぐらい悔しいですけど……ほんとにサッカー人生の中でも一番悔しかったかなと思っています。1年か2年経った後に、ここにいる全員より上に立って、この経験が活きたなって思えるように」
アピールすることはできなかった。ただし、U-17日本高校選抜候補の選手たちと差があるとは、思っていない。自分が力を発揮できなかっただけ。それでも、結果を受け止め、“一番下”から這い上がっていく。「一回負けた相手には今までも一度も負けてないんで、ここで一回全員に負けといて良かったなって思っています。メディアで(自分について)言われている反骨心みたいな、一番おっきなものをもらえたんで、これを原動力にして成長していきたい」。選手権得点王という肩書きにも「負けないぐらいの活躍をしないとな、っていうのは思っています」という三鴨が、この1年、また次のステージでライバルになる高校選抜候補たち以上の日々を過ごし、全員の上に立つ。
(取材・文 吉田太郎)
●第103回全国高校サッカー選手権特集
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