麻痺がある側に立ちサポートする「体位保持」で転倒を防ぐ
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月11日 9時26分
【誰でもできる力いらずの介助術】#4
介護で注意したいのが「転倒事故」だ。2021年までの6年間に消費者庁に寄せられた事故情報のうち、最も多い発生場所は自宅とされている。
「転倒が起こりやすいのは、体勢が最も不安定になる立ち上がりの『途中』や『直後』です。とりわけ脳血管障害や体に麻痺がある患者さんは一日の多くをベッド上で過ごしているので、急に立ち上がるとめまいを起こしやすい。立ち上がったらその姿勢に慣れるまで、いったん支える必要があるのです」
埼玉医科大学客員教授の根津良幸氏はそう話す。
とくに後遺症で麻痺が生じた人の場合、動かなくなった患側(かんそく=障害がある側)を無意識に使おうとして転倒する危険性が高い。
「ケガを防ぐには、相手が座位から立ち上がったら、介助者は麻痺がある患側に横並びで立ち、サポートする『体位保持』が重要です」
①相手も介助者も両足を肩幅の広さに開き、両者の骨盤、膝、靴の3カ所を密着させる(写真1)。
②背中から腕を回して中指と薬指で相手の腰に触れ、介助者側に引き寄せる(写真2)。
③相手の患側の手首を親指、中指、薬指の3本で下から取ってすくい、肘を伸ばして前へ出す(写真3)。
「万が一、相手が前後左右に倒れそうになったら、手首に添えた手を真下に引くことで転倒を防げます。その際、相手の手首を内側に少しひねると安定度はさらに高まります」
ただし、ベッド(イス・車イス)から立ち上がった直後に姿勢が安定せず、座り直すケースも少なくない。姿勢が不安定になった時は、
①相手の両脇の下から両腕を深く差し込み、手をパーにした状態で肘を曲げる。その際、介助者は左右どちらかの足を1歩前に出す。
②五指をピンと張った状態で両手の親指の付け根を相手の肩に当てて自分の肩へ引き寄せ、体勢を安定させる(写真4)。
③相手が安全に座れるように、介助者は少し前傾しながら徐々に肘を伸ばし、肘が伸び切ったらゆっくりと相手の体をベッドへ下ろす。
「相手がふらつくと介助者は焦って無理に力を使って抱きかかえようとしますが、それでは支えきれず両者共に倒れて大ケガを負う恐れがあります。力むと失敗するので介助者も力を入れないよう意識することが大切です」
焦らずゆっくりが転倒予防のカギだ。(おわり)
■詳しくはYouTubeチャンネル「根津式介護技術」で
(根津良幸/埼玉医科大学客員教授)
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