1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

親が身につけるべき「正しい話の聞き方・伝え方」10の原則~⑩【「不登校」「ひきこもり」を考える】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年5月24日 9時26分

写真

写真はイメージ

【「不登校」「ひきこもり」を考える】#25

 この連載をここまで読まれた親御さんは気づかれているかもしれませんが、親子のコニュニケーションが行き詰まる背景には、親子のやりとりの中で、親である自らに喚起された「わが子の行く末や将来への不安」、「親として思うようにならない悲しさ」といった湧き上がるつらい感情に巻き込まれる--といったものが存在します。そのため、子の気持ちなど配慮する余裕がなくなり、無意識のうちに自らがつらさから抜け出すことを優先してしまっているのです。

 親御さんは、そのために「叱る」「正論を言う」といった先制攻撃を浴びせて自らの感情に蓋をすることに必死で、子の心など目もくれていないという現実に気づき、そのような自分の感情ファーストから、子の感情ファーストに切り替える必要があるということなのです。

⑩「親の感情ファースト」にならないように最大限の注意を払う

 ある19歳の大学生の男性Bさんのケースです。Bさんは大学に行けなくなり、自宅にひきこもりのような生活に陥っていました。親子の会話が最低限しかないBさんが、こんな話をしてくれました。

「僕にはトラウマがあるんです。中学生の頃、大好きなおじいちゃんが病気で亡くなったのですが、自分は運動部の大会があって、僕だけ死に目にあえなかったんです。その後、姉と弟が、僕のことを人でなしとか薄情者とか責めてきて、僕は耐えられないほどのつらい気持ちになって、自己嫌悪に陥ったんです。でも、未だにこの話を何度、母親にしても、『そんなのしょうがないじゃない』と言われるだけで……。どうしてもこのことが昼夜問わず思い出されて、その苦しみが抜けないんです」

 ある日、お母さまがご一緒だった時、私もいるところでBさんが「あの日、本当に僕は苦しかった。今でもそのことが忘れられずに自分を責め続けているんだよ」と話したところ、やはりお母さまの第一声は「しょうがないじゃない」でした。

 そこで、私は口を挟みました。

「息子さんは、中学生の頃から10年近くもそのことで一人悩み苦しんでいるとおっしゃるのに、その話を聞いたお母さんの第一声が『しょうがないじゃい』というのはどうなんでしょう? もう少しかけられる言葉があってもいいと思うのですが……。『つらかった』と今、言ってくれているBさんに対してはどう思われますか?」

 すると、驚くことに突然、お母さまが号泣し始めたのです。そして、「私だって、そういったつらい思いを誰にも弱音を吐かずに一人でがんばってきたんです。それなのに、どうしてこの子の親だからと言って、その気持ちを私が聞かなければならないのですか!? そんなのズルイです!」と、胸の内を明かされました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください