今くるよさん他界…膵臓がんと糖尿病 血糖値異常に要注意【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年6月1日 9時26分
今くるよさん(C)日刊ゲンダイ
【Dr.中川 がんサバイバーの知恵】
お笑い芸人・今くるよさんの命を奪ったのは、膵臓がんでした。享年76。相方のいくよさんが9年前に亡くなると、1人で活動していた時期もあったようですが、最後の舞台は2年前の大阪公演だそうです。詳しい病状は分かりませんが、舞台を休んで闘病されていたのでしょうか。
膵臓がんの5年生存率は全症例で1割ほど。ステージ1でも5割を下回っています。がんの中でも特に厄介ですが、このところ増加傾向です。1年間の死亡数は3万8000人あまりと30年で8倍以上。統計上、性別ではやや男性に、年代では60代に多い傾向があります。
消化液の膵液を分泌する膵管には筋層がないため腫瘍ができると広がりやすく、また位置的に膵臓は胃や十二指腸と重なるためエコー検査では観察しにくい。さらに初期は症状がほとんど見られず、進行して見つかることが多いのが難治がんの理由のひとつでしょう。
そんな厄介ながんが急増しているのは、糖尿病との関係が指摘されています。糖尿病の患者数は予備群を含めて2000万人。2007年からやや減っているとはいえ、1997年の1370万人と比べると高止まりの状況です。生活習慣の影響で発症する2型糖尿病は、血糖値を下げるインスリンの分泌不良や効き目が悪くなるインスリン抵抗性が主な原因。インスリンにはがん細胞の増殖を促す作用もあり、後者によって血中のインスリン濃度が高まると、発がんリスクが高まると考えられています。
膵臓がんによってインスリンの分泌量が低下すると、糖尿病の人は突然、血糖値が不安定になるなど病状が悪化し、糖尿病でない人は初めて糖尿病と診断されるなどして、精密検査を行うと膵臓がんが見つかることもあります。糖尿病になると、全体のがんリスクは2割上昇しますが、膵臓がんは約2倍なのです。
特に親やきょうだいなどに膵臓がん患者がいるとよりリスクが高く、1人では4.5倍、2人は6.4倍、3人以上は32倍です。
遺伝的な要因を持つ人が、肥満や運動不足、大量飲酒、喫煙、ストレスといった、糖尿病を悪化させるようなリスクを重ねるのはよくありません。
私は夕食時にアルコールをよく飲むので、1年に2回エコー検査を受けるようにしています。膵管に腫瘍ができると、その分泌が妨げられるため膵管が拡張しやすいため、その拡張のチェックがひとつ。もうひとつは、膵臓の内部や周囲にできるのう胞を見つけるのが目的です。
太っている方はエコーで異常を描出するのが難しいため、CTやMRIを受けるのもベター。そして血糖値の急変は見逃してはいけません。
(中川恵一/東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授)
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