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口の中の問題は口の中だけにとどまらない…全身病のリスク因子に【第一人者が教える 認知症のすべて】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年6月4日 9時26分

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写真はイメージ

 本連載の担当者が歯のメンテナンスで通う歯科クリニックには、患者さんがよく見える位置に「歯周病を放置すると認知症のリスクが上がります」という手書きの紙が張られているそうです。歯の定期的な、適切なケアが認知症予防につながることを知ってもらうためにも、大変いい試みだと思います。

 口の中の問題は口の中だけにとどまりません。1980年代以降、世界中で研究が進み、細菌の感染で歯茎が赤く腫れる歯周病は、歯が抜ける原因になるだけでなく、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、がんなど全身病のリスク因子となることが示されています。

 その原因のひとつとして考えられているのが、「菌血症」です。菌血症とは、本来は無菌であるはずの血液中に細菌が存在する状態を指します。歯周病では、歯周病菌が血液中に存在するようになるわけです。

 歯周病は、次のような過程を経てじわじわと進行していきます。

【1】歯と歯肉の間の歯周ポケットにプラーク(歯垢)がたまり、歯周病菌が大量にすみつく

【2】歯周病菌が出す炎症物質や毒素が歯肉内部に侵入

【3】炎症物質や毒素を排除するため歯肉で炎症が起こる

【4】歯肉や歯槽骨が破壊され、最終的に歯が抜け落ちる

 歯肉が破壊され、歯周ポケットの中に潰瘍ができると、毛細血管がむき出しとなり、歯周病菌が毛細血管内に侵入してしまいます。それゆえ菌血症となる。

 さらに口の中に大量にいる歯周病菌は唾液と共にそのまま飲み込まれ、胃酸に負けずに大腸に達し、そこから血管に入り込んで全身を巡ります。

 歯周病の人は歯肉がもろい状態になっています。そこを歯ブラシやデンタルフロスでこすると、出血し、簡単に歯周病菌が血管内に入ってしまう。日常的に行う歯磨きなどで、30%の人に菌血症が起こっているという報告もあるそうです。

 歯周病は、痛みや発熱などの症状はほぼありません。日常生活に支障が出るような症状がないまま、進行していくのです。また、いくら丁寧に磨いていても、歯ブラシやフロスなどのセルフケアではプラークがたまっていくのを止めることはできません。歯科クリニックでの定期的な除去が必要なのです。

 ところが、歯科クリニックを定期的に受診している人は、特に男性では十分とは言えないように思います。厚労省による「令和4年 歯科疾患実態調査結果」を見ると、「この1年間に歯科検診を受けましたか」という質問に対し、「受けた」と答えた人の割合は、30~49歳男性で4割未満。50~64歳男性では40%台に乗るものの、半数には達していません。

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