「ギャンブル依存症」体験記(1)世間にウソの顔を見せながら“やっちゃいけないこと”に手を出して…
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年6月4日 9時26分
野原広子さん(C)日刊ゲンダイ
野原広子さん(フリーライター/67歳)
ドジャース・大谷翔平(29)の専属通訳だった水原一平被告(39)が違法賭博に手を染め、それによって膨らんだ借金返済のために大谷の口座から巨額のお金をだましとっていた事件の騒動はいまだに続いている。水原被告は「ギャンブル依存症だ」と告白したとされる。ギャンブル依存症(病的賭博)は誰でもかかる可能性がある病気だ。その恐ろしさを“経験者”の野原広子さん(67)が語る。
水原被告が大谷選手の口座から不正送金した金額が最初は6億円とされていたのに、じつは24億円だったと報道されたとき、多くの人は驚きの声を上げました。でも、ギャンブル依存症だった私からすると、不思議ではありませんでした。
自分のお金だけでギャンブルを楽しむのは趣味。依存症になると、世間にポーカーフェース=ウソの顔を見せながら、“やっちゃいけないこと”に手を出してまでギャンブルをしてしまうのです。大谷選手ほどの大金を持つ人の口座を自由にできる状況なら、6億円じゃ済まないですよ。
水原被告は逮捕されてホッとしていると思います。これまでマスコミに持ち上げられ、周囲にウソの顔を見せながら、裏では借金に追われ、ずいぶん苦しんでいたはず。今はその苦しみから逃れられたのですから。彼をかばうわけではありませんけどね。
ギャンブル依存症の人は、案外周りにいるものですよ。私の周りには公務員、仕事を持つ1児のママさん……。みんな特別じゃない、普通の人です。
私は20歳の頃からフリーでライターをしてきました。ライターだけで食べられないときはアルバイトを並行しながら、ルポルタージュやエッセーを書き続けてきました。ギャンブル依存症の借金で苦しんでいたときも、平気な顔をして仕事をしていました。だから今、私の周りはみんな「知らなかった」「気づかなかった」と言います。3年前に亡くなった母親も、最後まで知りませんでした。
ギャンブル依存症は“遺伝”も関係しているのではないかといいますね。私の母親も、母の再婚相手の養父も、パチンコを楽しむ人たちでした。実父は私が3歳のときに亡くなったので、よくわかりませんが。
私はそんな両親に育てられたので、小学校の頃から両親と一緒にパチンコ店に出入りし、景品のチョコレートをもらって喜んでいました。ギャンブルが「倫理的に好ましくないこと」だなんて意識はまったくなく、レジャーのひとつという感覚でした。 =つづく
(構成=中野裕子)
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