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「記憶」は想像以上に曖昧…容易に真実と塗り替えられる【科学が証明!ストレス解消法】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年6月7日 9時26分

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写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

【科学が証明!ストレス解消法】#168

「サブリミナル効果」という言葉があります。映像の中に、見ている本人が気づかないような速さで刺激となる映像を見せると、見ている人は無意識にその隠された映像によって影響を受けてしまう効果です。

 こうした効果は、会話の中にも潜んでいることがあります。次の実験は、実際に私が学生たちを対象に行ったものですが、「言葉のサブリミナル効果」とも呼べる効果を発揮しています。

 学生たちに、とある学園ドラマの映像を見せた後、その映像に出てきた教頭先生役の人について、私は「さっきのバーコード頭の教頭先生が」という具合に、意図的に教頭先生の悪口を言いながら映像を振り返りました。その後、映像で見た教頭先生の特徴を提出用のプリントに書いてくださいと伝えました。

 すると、半分以上の学生が頭髪の薄さについて書いていました。ところが、実際の映像の教頭先生の髪の毛はちっとも薄くなかったのです。言葉の中にもサブリミナル効果のように、虚偽の情報をちりばめることで印象を操作することができてしまう。記憶というものは、簡単に言葉によって変えられてしまうことが分かると思います。

 また、アメリカの認知心理学者であるエリザベス・ロフタスは、長年、変わってしまう偽りの記憶(虚偽記憶)の生成について研究しています。一例を挙げて説明します。

 まず被験者に、交差点に進入した自動車が別の自動車に接触し、玉突き事故を起こしてしまった映像を見せます。その後、「車Aは一時停止標識を通り過ぎたとき、どれくらいの速さで走っていましたか?」と質問しました。

 実は、映像には一時停止標識はなかったのですが、意図的に質問内容に入れることで、被験者の反応を調べたのです。興味深いことに、「一時停止標識は見ましたか」と被験者に尋ねると、なんと半分以上の人が見ているはずがない一時停止標識を「見た」と答えた。まさに、虚偽記憶を生成したというわけです。

 私たちの記憶は、思っている以上に曖昧です。かつて、故・志村けんさんが「亡くなった」というウワサが流れたことがありました。海外でも似たケースがあり、1994年から1999年まで南アフリカ共和国の大統領を務め、2013年に95歳で死去したネルソン・マンデラさんが、「1980年代に獄中死した」という誤った記憶を多くの人が持っていたという事実もあるほどです。こうした単なる記憶違いではなく、多数の人が共通した虚偽の記憶を持つ現象を「マンデラ効果」と呼ぶのですが、インターネットスラングとしてこの言葉は拡散された背景を持ちます。

 現代は、ネットによってさまざまな情報が飛び込んできます。しかし中には、意図的に印象を操作するような情報も潜んでいます。「マンデラ効果」は、まさにネットの“良くない”面が表れた現象でしょう。

 記憶は容易に変わりやすく、そして伝播する。与えられた情報をうのみにせず、自分でいったん整理するなど、立ち止まることを忘れないようにしましょう。

(堀田秀吾/明治大学教授、言語学者)

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