肺がん治療の今(1)末期であっても長期生存に希望が見えてきた
日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年6月11日 9時26分
肺がん治療の進歩が目覚ましい
2024年6月から、早期肺がんの保険治療に陽子線が加わる(※)。治療の進歩が目覚ましい肺がん。その最前線はどうなっているのか?
「かつて肺がんは、手術ができなければ来年の桜は見られないと言われるほど、非常に治療成績が悪いがんでした」
こう言うのは、岐阜県にある中部国際医療センター肺がん治療センター長の樋田豊明医師(呼吸器内科部長)だ。しかし今、状況は大きく変わった。
「がんの標準治療には手術、薬物、放射線があります。肺がんの薬物治療では、従来の抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤の3種類があります。放射線治療では、効果の高い陽子線も適応がある。患者さんの肺がんに適したものを適切なタイミングで組み合わせることで、治療成績が向上してきたのです」(樋田医師)
従来の抗がん剤は、がん細胞のみならず正常細胞の分裂、増殖まで攻撃してしまう。ゆえに、副作用が強い。しかし分子標的薬は、正常細胞には攻撃が向かず、がん細胞の発生や増殖に関わる特定の分子だけを狙い撃ちする。副作用が少なく、従来型よりがん細胞の活動を抑える時間が数倍長く、長期間コントロールできる。
免疫チェックポイント阻害剤は、2018年、京都大学の本庶佑氏がノーベル生理学・医学賞を受賞したニュースで耳にした人も多いのではないか。
私たちの体には、敵が来たら攻撃する免疫機能が備わっている。がん細胞も敵なので、免疫細胞であるT細胞が、がん細胞の存在を認識すると活性化し、攻撃を始める。ただ、攻撃が過剰になり自分の細胞が傷つけられるのを回避するため、私たちの体には、T細胞を抑える機能、すなわち免疫チェックポイントも備わっている。
「がん細胞は免疫チェックポイントで、T細胞の攻撃をかわし、増殖する。それに対し、免疫チェックポイント阻害剤は免疫チェックポイントにブレーキをかけ、T細胞の本来の働きを取り戻させます」(樋田医師)
治療選択肢が増えた今、たとえ手術ができなくても、長期生存に希望が見えてきた。次回からより詳しく紹介する。(つづく)
※陽子線は放射線の一種。保険適用となるのは早期肺がん(Ⅰ期~ⅡA期)のうち切除不能なもの
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