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「緩和」には適切な調整が必要…痛みとの付き合い方は人それぞれ【老親・家族 在宅での看取り方】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年6月12日 9時26分

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痛みがあるだけでQOLが下がる 

【老親・家族 在宅での看取り方】#97

 患者さんの痛みをできるだけ取り除くことは、訪問診療の中でも非常に重要なことのひとつです。痛みがあるだけで、患者さんのQOL(生活の質)が大きく下がり、自宅での療養自体を難しくすることもあるからです。

 ですが、いくら痛いからといって、体の弱った患者さんに対して、むやみに鎮痛剤などの麻薬を使えばよいというわけではなく、使うタイミングや使用量などの適切な調整が必要になります。

 痛みの原因は種類がたくさんありますし、痛みとの付き合い方も患者さんによってさまざま。だからこそ、その患者さんにとってのベターは何かを探り、痛みのコントロールを図ることが求められます。

 娘さんと同居する、胃がん末期の90代の女性。1カ月ほど前、夜の6時ごろに他の病院からのご紹介で、痛みのため救急に訪問の要請をいただいたのですが、結局はご本人の要望で、翌朝に改めてご自宅に伺うこととなりました。

「いま痛みはどうですか?」(私)

「左向きで寝てると落ち着いています。うちの中では壁につかまりながら歩いています」(本人)

「結構お痛みが強いと伺っています」(私)

「波はありますね。左向きだと全然痛くない」(本人)

「左向きでも痛いっていう時もあるよ」(娘)

「元々は元気だったんですけどね。もう90歳ですからね」(本人)

 痛みでずいぶんと弱られているご様子のため、さっそく鎮痛剤の処方を検討することに。

「食事はそんなに食べられないですか」(私)

「ほとんど食べてない」(本人)

「エンシュアH(栄養剤)だけです。1日1缶弱。一度にたくさんだと痛みが出るので少しずつにしています」(娘)

「そういう時にオキノーム(鎮痛剤)を飲んでみたことってあります?」(私)

「最初カロナール(解熱鎮痛剤)を毎食後に飲んでいたんですけど、プラスして大丈夫ですか?」(娘)

「みなさん併用されてます。内臓痛とかにはオキノームの方が効きますし。整形外科的な痛みに対してはカロナールが効いたりするので、両方使って痛みを取るってことですね」(私)

 こうして2週間後には、鎮痛効果が発揮されたようで眠られる時間が増えてきましたが、衰えは隠せずしだいに無呼吸を繰り返す状態に。

「苦しそうではないですね」(娘)

「皆さんに週末会うことはできましたか?」(私)

「はい、兄の家族に」(娘)

 私は呼吸の浅いご様子を見て、近々お看取りの可能性が高いことをお伝えし、その日から連日伺うことにしました。そして9日目に長い無呼吸へと陥ったのです。

「心臓の音は聞こえないですね」(私)

「さっきまで反応がありましたよね?」(娘)

「目の反応もないですね」(私)

「でもさっきまでは反応はありましたよね」(娘)

「反応があるか5分ほど様子をみましょう」(私)

 こうしてお母さまが旅立たれたことを、娘さんとご一緒に確認し、静かに穏やかに受け入れていただいたのでした。

(下山祐人/あけぼの診療所院長)

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