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「EBM=根拠に基づいた医療」によりクスリの使い方も標準化された【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年6月15日 9時26分

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研究論文や教科書から情報を集め批判的吟味を行う

【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

「EBM」とは、Evidence Based Medicine(エビデンス・ベースド・メディシン)の頭文字をとったもので、日本語にすると「根拠(証拠)に基づいた医療」となります。

 かつての医療は、あの患者はこの方法でうまくいったから今回もこれでいこう……といった感じの「経験に基づいた医療」が主でした。では、なぜ今の主流がEBMになったかというと、すべての患者に最も有効かつ安全な医療を提供するためで、それを実現する指針がEBMなのです。

 Evidenceとは一言でいうと「情報」です。情報にはさまざまなものがありますが、代表的なものとして、研究論文(こちらもさまざまな種類があります)や教科書が挙げられます。こういった情報を集め、批判的吟味を行い、最終的に医療に利用できる指針=EBMが作られます。私も作成に関わったことがありますが、情報量がとても多く作業も大変なものでした。

 EBMにはクスリの使い方も含まれます。がんの化学療法を例に挙げると、以前は経験則に基づいて抗がん剤の組み合わせ方、投与量、吐き気止めなどの副作用対策が決められていました。そのため、病院ごと、主治医ごとにその内容は異なっていました。中には副作用のリスクが高い治療法などもあったと思われます。しかし今はEBMが普及し、すべて根拠に基づいて決められるため、病院や主治医で内容が異なるということはなくなり、誰もが標準的な治療を受けることができるようになりました。

 また、同じ疾患の治療であっても年齢ごとに指針が決められているものが多く、「高齢者であればこのクスリを第一選択として治療目標はここにする」といった感じで明文化されています。つまり、EBMの普及によってクスリの使い方も標準化されるようになったのです。

 では、なんでもEBMであればいいのかというと、決してそんなことはありません。前述の「経験に基づいた医療」は今でも大切です。患者と共に今後の方針を決める際、Evidenceは確かに極めて重要な情報なのですが、そこに患者の病状や周囲の環境、意思、医療者側の経験も加えて、その治療法を患者に適用するか総合的に判断することが重要なのです。

 みなさんの中にも、病気の治療方針について主治医から説明を受けたことがある人はいらっしゃるでしょう。そのとき提供された情報は、科学的根拠を中心にこれまでの経験に基づいたものも含まれていました。ただ、それを強制しているわけではなく自身の意思も含めて判断されたはずです。EBMはあくまで指針で、必ずしもそれに従わなければならないというものではありません。

(東敬一朗/石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師)

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