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「痛み止め」と「胃薬」がセットで処方されるのはなぜか【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

日刊ゲンダイ ヘルスケア / 2024年6月22日 9時26分

「痛み止め」と「胃薬」がセットで処方されるのはなぜか【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

クスリは医師の指示通り服用(写真はイメージ)

【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

 たくさんの種類がある痛み止めの中に、「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」と呼ばれるクスリがあります。成分名でいうとロキソプロフェンやジクロフェナク、セレコキシブなどが挙げられます。

 高齢者の中には、関節痛などのために担当医から処方されている方もいらっしゃるでしょう。NSAIDsが処方される場合、多くは胃薬も一緒に処方されます。なぜなのでしょうか。

 この疑問を解明するためには、まずNSAIDsがどうやって痛み止めの効果を発揮しているかについて知る必要があります。すべての痛みではありませんが、痛みにはプロスタグランジンという物質が関与しています。プロスタグランジンは炎症にも関与しています。つまり、プロスタグランジンの生成を抑えることができれば、痛みや炎症を軽減することができるということです。NSAIDsは体内でプロスタグランジンが生成されるときに働くシクロオキシゲナーゼという酵素の働きを抑制することで、プロスタグランジンの生成を抑え、痛みを改善します。

 こう聞くと、プロスタグランジンは悪者のような感じがしますが、じつは胃の粘膜を保護する粘液の成分でもあります。つまり、NSAIDsがプロスタグランジンの生成を抑えると、痛みだけでなく胃の粘液の生成も抑制してしまうのです。

 粘液が減少すると胃は胃酸の影響を受けやすくなってしまって、胃潰瘍の原因となる可能性があります。このリスクはNSAIDsを長期間継続して服用していると上がり、頓服ではあまりありません(頻回に服用するとリスクは上がります)。こういったNSAIDsによる胃潰瘍を予防するために、特に継続して服用する場合には胃薬が一緒に処方されるのです。

 NSAIDsすべてにおいて胃潰瘍のリスクが高いというわけではありません。シクロオキシゲナーゼには2種類あり、胃の粘液の生成に必要なシクロオキシゲナーゼにはあまり作用せず、痛みの原因となるプロスタグランジンの生成に関与するシクロオキシゲナーゼに重点的に作用するNSAIDsもあります。とはいえ、いずれのNSAIDsも大なり小なり胃の粘液の生成を抑制するので、高齢者や胃潰瘍の既往がある人が使用する場合はどのNSAIDsであっても胃薬を併用した方がいいでしょう。

 NSAIDsを継続的に服用していても、「別に胃は痛くないから胃薬は服用していなかった」という患者さんもたくさんいらっしゃいます。でも、その胃薬にはとても大事な役割があります。胃潰瘍になってからでは遅いので、NSAIDsと胃薬が同時に処方された場合は、どちらも忘れず医師の指示通りに服用するようにしましょう。

(東敬一朗/石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師)

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