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追悼・唐十郎さん 日本の現代演劇を変革した不世出の天才は寺山修司と命日が同じに

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月17日 12時12分

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唐十郎さん(C)日刊ゲンダイ

 去る5月4日に急性硬膜下血腫のため都内の病院で亡くなった劇作家・演出家・俳優の唐十郎(享年84)の葬儀・告別式が14日、東京・杉並区の堀ノ内斎場で営まれ、関係者やファンが参列し、故人との別れを惜しんだ。

 唐が日本の演劇界に与えた影響は絶大で、戦後の現代演劇は「唐以前、唐以降」に分けられるといっても過言ではない。

 1963年にサルトルの評論集のタイトルから取った「シチュエーションの会」(翌年、状況劇場と改名)を旗揚げし、街頭劇を経て、67年に新宿・花園神社境内に紅テントをひっさげて登場、「腰巻お仙・義理人情いろはにほへと篇」を上演した。

 訓練された俳優術ではなく、役者の個性に根ざす独自の演劇論「特権的肉体論」は麿赤兒、大久保鷹、根津甚八、小林薫ら怪優、奇優、名優を輩出した。 

 若者の熱狂的な支持を受け、旧態依然とした新劇に対抗するアングラ(アンダーグラウンド)演劇の旗手として、寺山修司の「演劇実験室・天井桟敷」、鈴木忠志の「早稲田小劇場」、佐藤信の「黒テント」と共に4大アングラ劇団のひとつとして華々しく活動した。

 “オカマ”が闊歩する下谷万年町(現在の上野界隈)で生を受け、「鳥の眼(俯瞰)」ではなく、「虫の眼」で見た猥雑で幻想的なロマンチシズムあふれる物語を紡ぎ出した。

 テント幕が跳ね上がり、借景へと主人公が飛翔するクライマックスのスペクタクルは70年安保を前に燃え上がった全共闘運動に連動する観客に強烈なショックを与えた。

 世間の常識や良識に対して果敢に斬り込む唐は数多くの武勇伝を残している。

「新宿騒乱」の68年、「腰巻」というタイトルや芝居の猥雑さに花園神社の氏子たちが難色を示すと、反発した唐は「新宿見たけりゃ今見ておきゃれ じきに新宿 原となる」の捨てぜりふを残して花園神社と決別。翌69年1月、東京都の中止命令を無視し、新宿西口中央公園でテントの周りを200人の機動隊が取り囲む中、決行した「腰巻お仙 振袖火事の巻」では、終演と同時になだれ込んだ警官によって唐は逮捕された。

 同年にはささいな誤解が招いた天井桟敷との乱闘事件を起こし、73年には初演出したテレビドラマ「汚れた天使」が、テレビ局の上層部の「こんな非常識でわけがわからない作品は放送するわけにはいかない」という判断で放送中止になり、唐と出演者の中村敦夫は記者会見を開き、抗議声明を出した。また、出演者の李礼仙、常田富士男、東野英治郎は「今後、一切、系列テレビには出演しない」と記者会見で宣言し、佐藤慶、小松方正、熊倉一雄、石橋蓮司らが同調した。

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