日米経済格差がもたらす日本人選手の新たな価値 圧倒的円安でMLBには“激安ランチセット”価格(鈴村裕輔)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月22日 9時26分
今永昇太(C)AP=共同
【メジャーリーグ通信】
「ニューヨークやロサンゼルスなら、ランチプレートで2500円、コーヒーで1000円はする」
500円で購入できるキッチンカーの弁当や1000円で飲み物もつくランチセットに驚きを隠せない米国からの観光客や留学生の声は、史上初の4万ドルに達したダウ平均株価や好況さが強調される同国経済、さらに日米の生活費の差の広がりを象徴するかのようである。
しばしば「弱すぎる円」や「安すぎる日本」は日本経済の構造的な問題と世界経済の動向に起因しており、われわれの努力では克服することが難しい問題である。
だが、そのような問題は大リーグ入りを目指す日本プロ野球界の選手たちの位置づけにも影響を与えている。
昨年オフは大谷翔平が大リーグ史上最高額となる10年7億ドル、山本由伸が投手史上最高の12年総額3億2500万ドルでともにドジャースと契約するなど、大リーグでは日本人選手に対する大型契約が相次いだ。
選手自身の実績や将来性の高さだけでなく、2023年のリーグ全体の総収益が史上最高の110億ドルを超えたとする大リーグの好況さを考えれば当然の結果と言えよう。
しかも、今季の開幕時点での大リーグの選手年俸の平均が498万ドルなのだから、4713万円と過去最高を記録した日本プロ野球の平均年俸との差は大きくなっている。
例えば、今年4月期のナショナル・リーグ月間最優秀新人賞に選ばれた今永昇太(カブス)の年俸は900万ドルである。日本では破格の高給ながら、大リーグでは上位100位にも入らない。これは、カブスが平均年俸の2倍足らずの金額で顕著な実績を挙げた新人選手を獲得したことを意味する。
もちろん、マイナー契約の場合は大リーグに昇格しない限り日本での待遇を下回る年俸しか手にできない。
それでも、日本からの選手の場合、大リーグへの昇格に伴って契約が変更されれば最低保証年俸74万ドルを超え、平均年俸相当の金額となることがほとんどである。
かつて、大リーグ各球団にとって日本からの選手を獲得する際には、大きな投資という懸念がぬぐえなかった。
しかし、今やあたかも訪日客にとって驚くべき安さのランチセットのように、各球団にとって日本人選手は手頃な年俸で活躍が期待できる存在となっているのである。
(鈴村裕輔/野球文化学会会長・名城大准教授)
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