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「やっぱり本物のジョイスさんがいいね」に安堵したビルボードライブ東京の夜(松尾潔)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月24日 9時26分

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ジョイス・ライスさんと筆者(提供写真)

【松尾潔のメロウな木曜日】#86

 前回に続き、六本木・東京ミッドタウンのクラブ&レストラン〈ビルボードライブ東京〉での話。さる5月19日(日)、ジョイス・ライスのライブが行われた。彼女はアフリカンアメリカンの父と日本人の母を持ち、LAを拠点に活動する見目麗しきR&Bシンガー。学生時代に動画サイトでカバー曲を次々に公開してデビューのチャンスを掴んだ。自作曲を美声で歌い、情熱的に踊る。注目されないはずがない。

 2016年5月にリリースされた『Stay Around』は、LAの気鋭のクリエイターたちの協力を得て完成した作品集だった。すぐに気に入ったぼくは、7月にNHK-FM「松尾潔のメロウな夜」で紹介した。以来、彼女はぼくのお気に入りアーティストとして、新譜が出るたびほぼオンエアしてきた。

 番組の年間ランキングでも上位に位置するようになった頃だろうか、ぼくのSNSにジョイス本人からメッセージが届く。贔屓にしていることをどこかで知り、シンプルな日本語で謝辞を送ってきたのだ。これがきっかけでメッセージをやりとりするようになった。親密の度合いがぐっと深まったのは、初めてのフルアルバムを引っ提げて初単独来日ライブをはたした一昨年あたり。彼女とお母様をぼくの自宅に招いた。それからは私用で来日したときも会って食事をするような関係である。

 90年代生まれのジョイスが初めて夢中になったアーティストは、今春のスーパーボウル・ハーフタイムショウでの千両役者ぶりも記憶に新しいアッシャー。と書きつつ、どれだけの読者にご理解いただけるか心もとないが、アメリカR&Bシーンの頂点であり、マイケル・ジャクソン~マーヴィン・ゲイ的存在です。ジョイスが人生で最初に手に入れたCDは、そんなアッシャーの2001年の『8701』だそう。同作収録のグラミー賞受賞曲「U Remind Me」の日本リミックスを手掛けていたぼくとしては、それだけでもジョイスとの音楽的な縁を感じずにはいられない。だから、今回の再来日公演にあたり彼女からコラボを持ちかけられてもさほど驚かなかった。ついにその時が来たかという感慨のほうが大きかった。

 こうして、2016年に初めてラジオでかけた彼女の曲「Do You Love Me」の日本語詞バージョンを作ることに。原曲の英語詞を細かく分析してすべての母音を拾うところから始めるのがぼくの訳詞法。英語の音韻だからこそ生まれたグルーブを、日本語でいかに再現できるかが腕の見せどころ。これを書きあげたら、ジョイスからネットで送ってもらったカラオケに仮歌をのせて返送する。ほんの数年前までは〈仮歌さん〉選びに結構な時間を費やすのが当たり前だったが、今ぼくはもっぱら歌声合成ソフトウェア頼みである。人間らしくリアルな声での歌唱が可能な、最新のAI技術で開発されたソフトに「歌わせる」のだ。驚く方もいるだろうが、日本の音楽制作者の間で最早このやり方は珍しくもない。

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