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石原さとみ「missing ミッシング」と杏「かくしごと」…母になった30代女優2人の転機と新境地

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月30日 9時26分

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“分岐点”となるか(C)日刊ゲンダイ

 5月17日に公開された石原さとみ主演の映画「missing ミッシング」。これは失踪した幼い娘を捜し続ける母親・沙織里を主人公に、夫との娘捜しに対する温度差の違い、時が経つにつれて興味本位の報道へと変わっていくマスコミの対応、沙織里がアイドルのコンサートに行っていた間に娘が失踪したことからSNSで高まる彼女への誹謗中傷などによって、ヒロインの心が壊れていくさまを描いた、吉田恵輔監督による人間ドラマである。

■吉田監督に「使ってください」と直談判

 心の焦りによって夫や唯一定期的に失踪に関することを扱ってくれるTVマンにつらく当たり、不安が増すと彼らにすがるという、情緒不安定な沙織里の目まぐるしく変わる精神状態を、石原はまさに体当たりで演じている。彼女は6年前、吉田監督に「自分を使ってください」と直談判して今回の出演につながったそうだが、直談判した理由は「吉田監督なら、自分を変えてくれると思った」からだとか。確かに監督はこれまで、「ヒメアノ~ル」(2016年)で森田剛に不気味な快楽殺人犯を演じさせ、金で買われて日本の農村へやって来たフィリピン人の花嫁を挟んで、安田顕の息子と木野花の母親が愛に満ちたバイオレンスを繰り広げる「愛しのアイリーン」(18年)など、人間の奥底に潜む暗部をえぐり出した快作を作ってきた。

 今回の映画でも石原に、娘のためならなりふり構わず行動する、周りが見えなくなったヒロインを演じさせ、彼女の新境地を引き出している。石原は撮影前、入念に役づくりをするタイプの女優だが、ここではふっと娘への感情があふれ出てくる場面など、事前の計算だけでは測りきれないエモーショナルな演技が印象的。これによって彼女は演じる役をきっちりこなす女優から、もっと幅のある表現者へと育っていくかもしれない。

凛々しく行動的なキャラクターから一変

 もう一人、6月7日に公開される「かくしごと」(関根光才監督)に主演した、杏にも注目したい。ここで彼女は犯罪と知りながら、記憶喪失になった少年を自分の子供として育てる女性を演じている。少年には虐待の痕があって、ヒロインは彼を守るために偽りの母親になることを決意するのだが、やがて登場人物それぞれに隠し事があって、それがある出来事に結び付いていくヒューマンドラマだ。杏はこのところ、「キングダム 運命の炎」(23年)や「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」(同年)など、凜々しく行動的なキャラクターを演じてきたが、ここでは母性によって自ら罪に手を染めていく女性に扮して、やはり新たな一面をのぞかせている。

 思えば杏は38歳で3児の母親で、37歳の石原も一昨年に第1子を出産した。母になった30代の彼女たちが、今の自分だからこそ演じられる役柄に挑んでいる。共にCMにもよく登場する好感度も高い2人が、周りから与えられたイメージではなく、自分が演じたいと思う役に取り組むその姿勢。これに観客はどう応えるのか気になるところだ。

(映画ライター・金澤誠)

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