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新型コロナでは開発中止も…「アビガン」が世界初のマダニ感染症治療薬として復活(重道武司)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月30日 9時26分

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マダニ感染「重症熱性血小板減少症候群」のウィルス顕微鏡写真(=国立感染症研究所提供)と、治療薬に承認された「アビガン」(C)ロイター=共同

【経済ニュースの核心】

 帰ってきた!──と言っても何も「ウルトラマン」のことではない。「アビガン」だ。

 新型コロナ感染症の流行初期に、治療薬候補として安倍晋三元首相がしきりと肩入れしたことから「アベガン」などとも皮肉られた医薬品だ。一時は巨額の国家備蓄予算も付けられたが、2022年秋「十分な効果が得られず」として対コロナ薬としての開発中止が決定。

 新型コロナの感染症法上の5類への移行とともに、その存在は人々の脳裏から遠ざかりつつあった。それが先週、全く別のウイルス性感染症の治療薬として蘇ったのだ。

「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)。マダニが媒介する感染症で、薬事審議会(厚生労働相の諮問機関)の専門部会で治療薬として承認することが了承された。正式に承認されればSFTSの治療薬としては世界初となる。

■死に至るケースも

 SFTSはマダニにかまれることで発症する。潜伏期間は6~14日程度とされ、まず38度以上の発熱。さらに嘔吐や下痢といった消化器症状を引き起こす。70歳以上の高齢者は重症化しやすく、死に至るケースも少なくない。

 国立感染症研究所によると昨年は国内で過去最多となる133人の感染を確認。13年以降では今年4月までに963人が発症し、うち106人が死亡したという。単純計算で致死率は10%を超えていることになる。

 ただこれまでは有効な治療薬はなく、対症療法で全身状態を管理していくしか手だてがなかった。そこに颯爽とアビガンが登場したわけだ。ウルトラマンのごとく。

 アビガンは約10年前、富士フイルムホールディングス(HD)傘下の富士フイルム富山化学と富山大学との共同開発で製品化された抗インフルエンザ薬。「既存薬が効かない新型インフルエンザの流行などに備えることが開発動機だった」(関係者)ともされている。

 しかし動物実験で胎児などに奇形を生じさせる「催奇形性」があることが判明。妊婦などの服用による“薬害”を恐れた厚労省は国家備蓄に回した。

 今回ようやくそれを生かせる局面が訪れたことになるが、「SFTSの特効薬とまでは言い難い」(医療関係者)のも事実。マダニとダニのようなやつには今後も気を付けた方がよさそうだ。

(重道武司/経済ジャーナリスト)

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