旧ジャニーズ性加害問題は未解決、日本に「人権後進国」の烙印…国連調査報告書の衝撃中身
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月31日 11時28分
自社都合で被害者への補償金を算出、その公表を禁ずるなど、まるで誠意がない(東山紀之社長と藤島ジュリー景子前社長)/(C)日刊ゲンダイ
ことし6月に旧ジャニーズ事務所による連続児童性加害がジュネーブでの国連人権理事会を通じて世界に伝えられる運びだ。昨年来日し、この問題を調査した「ビジネスと人権」に関する作業部会がまとめた調査報告書が公式サイトにアップされたが、スマイルアップに社名を変えて以降の対応についてこう指摘されている。
「数百人のタレントが性的搾取や虐待を受けたと訴えていることについて、依然として深刻な懸念があり、憂慮している」
同社は補償や救済を進めているが、補償を求める被害者に弁護士費用を自己負担させているとし、「容認できない。救済を求める被害者のニーズを満たすには道のりは長い」と厳しく評価した。
スマイル社は自社都合の査定で被害者への補償金を算出、その公表を禁じるなどして、被害者の口を塞いでいる。また、被害者へ浴びせかけられている誹謗中傷にも、具体的な防止策を取らないばかりか、東山社長は「誹謗中傷にも言論の自由」と言い放った。それで批判が殺到すると、そのコメントを放送したBBC放送が歪曲して伝えたと抗議。ジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川氏のほか、元マネジャーらスタッフ2人による性加害も把握していながら、警察への通報を拒否したまま。メディアからの記者会見の要請も馬耳東風で、このまま頬かむりとばかりの鉄面皮なのは日刊ゲンダイも繰り返し報じている。
また作業部会は「日本のメディア企業は何十年もの間、このようなスキャンダルの隠蔽に関与してきた」とも指摘。性加害問題はすでに過去の話とばかりに、また旧ジャニーズタレントの起用をはじめているが、その問題意識の低さも改めて知らしめられることになる。日本は「報道の自由度ランキング」で180カ国・地域中70位だが、さらに下がる可能性もあるのではないか。
■「エンタメ業界としては画期的重大インシデント」
「当事者の会」副代表の石丸志門氏はこうコメントした。
「日本語訳で『憂慮』となっている部分は原文では『alart』となっており、警告の意味だと理解しています。スマイルアップに一定の評価はしつつも、不備を具体例を示して非難して受け入れられないとしています。正直考えていたより表現が緩く、国への指摘もこの件に紐づけては言及されていなかったので、残念な気持ちがあります。とはいえ国連関連の機関が一企業を名指しして問題提起している点は、エンタメ業界としては画期的重大インシデントと捉えることができるのではないでしょうか」
元代表で作家の平本淳也氏は言う。
「この問題における解決にはまだ程遠いとの指摘といい、これまで提出してきた多くの要請書にも反応してこなかったスマイルアップの問題点といい、国連の作業部会の調査がきちんと行われていることに胸をなで下ろしています。今回の文書は短く要約したものですが、今後さらに突っ込んだ提言などが発信されるとも信じています。この問題は決して過去の話ではなく、今も、これからも被害者には付きまとってくる。ジャニー喜多川とジャニーズ事務所が犯した罪が消えることはありません。その罪が国連の報告によって、世界の歴史に刻まれることの意味は決して小さくないと思います」
故ジャニー喜多川氏による未成年者への連続性加害は世界最悪級とされる。それが世界に露呈してなお、自分たちで解決しようともしない日本が二流以下の人権後進国であると世界に認識されるのではないか。
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