今の日本はなぜ円高になりにくいのか…経済アナリスト森永康平氏に聞いた(児玉一希)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月1日 9時26分
――日本の企業は常に為替リスクを織り込んでいますよね。さらに現在の国際経済において、中国との関係も非常に重要です。大統領選挙の結果にもよると思いますけど、アメリカは今後どういうスタンスを取っていきそうでしょう?
そうですね。米中関係では、今後も強硬な関税合戦になると思います。最近バイデン氏が関税引き上げを発言したのもトランプ氏の影響が大きいです。トランプ氏は中国の安い製品、特に電気自動車のせいでアメリカの企業、例えばテスラに悪影響を与えているとし、中国に関税をかけるべきだと主張しています。
トランプ氏が対中強硬派であるため、バイデン氏も発言としては強硬な姿勢を示さなければ、ペンシルバニアなど労働者が多い激戦州の票を取れなくなってしまう。となると一度強硬な発言をした以上、実行しないという選択肢はない。結局どちらが勝ってもアメリカとしては、中国に対して強硬な策を取ることになるでしょうね。
ただ、これはアメリカにとってもろ刃の剣です。中国に対して強硬に出過ぎると、中国は「もういいです」とアメリカ以外の市場を開拓しようとするかもしれません。
例えば、ウクライナ戦争がありましたが、ロシアと中国は別にズブズブな関係にあったわけではありません。しかし中国に対する太陽光パネルやシリコン、半導体などへの規制が厳しくなったため、中国は支援が必要なロシアとくっつきました。
これまでアメリカは世界の警察として位置づけられ、特に日本のような国では、アメリカナンバーワンのイメージが根強いです。しかし新興国が力をつけてきて、なぜアメリカの指示に従わなければならないのかと疑問を持つ国々が増えてきた。いわゆるグローバルサウスです。
彼らは中国のやり方を好ましいとは思わず、中国に特別な敬意を持っているわけではありません。しかしアメリカが中国はじめグローバルサウス対して圧力をかけると、彼らはアメリカとの関係よりも中国との関係を重要視するようになる。その結果アメリカが単独で行動しにくくなり、ヨーロッパや日本などに対して「仲間だろう」と声をかけるわけです。
このような動きが起きると歴史的には逆行するように思います。過去30年間で進んできたグローバル化やボーダレス社会の流れから『ブロック経済』のようになる可能性が出てくる。冷戦のような状況とまではいかないと思いますが、それに近づきつつあると言えます。
トランプ氏の再選で気になるアメリカの外交
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