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TSMC進出の熊本地元企業は深刻な人手不足に直面…隣県の鹿児島にも影響が

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月4日 9時26分

TSMC進出の熊本地元企業は深刻な人手不足に直面…隣県の鹿児島にも影響が

地方経済はどうなるか?(TSMCの第1工場)/(C)共同通信社

 半導体の受託生産で世界最大手の台湾企業「TSMC」の子会社「JASM」が熊本県菊陽町に建設中の第1工場が完成、2月24日に開所式が行われた。

 同社はTSMCを中心にソニーグループの半導体子会社ソニーセミコンダクタソリューションズ、デンソー、トヨタ自動車などの出資による半導体製造会社。すでに第2工場の建設も発表され、第1、第2工場の投資総額は200億ドル(約3兆円)を超える。

「日本政府は第1工場で最大4760億円、第2工場で7320億円を支援する」(経済産業省情報産業課)

 巨大プロジェクトの進出で熊本県内への経済効果は絶大で、半導体メーカーに限らず非製造分野の不動産、サービス、鉄道など各産業に幅広く波及している。

 九州の総合金融持ち株会社・九州フィナンシャルグループによる試算では、TSMCの県内進出で2022年から31年までの10年間で約6兆8500億円の経済効果を試算。さらに、九州経済調査協会は、九州、沖縄、山口地域への10年間の半導体関連設備投資の経済効果を約20兆770億円と推計している。

 こうした経済波及効果への期待が高まる一方、地元企業の大きな課題となっているのが人手不足の問題だ。すでに熊本県内では人材確保に企業間の競争が激化しているという。隣県の鹿児島県の企業ではTSMCへの人材流出も始まり、今後の人手不足を懸念する。

■平均年収400万円→600万円に上げて中途採用を募集

 九州経済研究所が4月23日に発表した県内企業・業況調査結果では、「今後、TSMC進出により鹿児島県全体にどのような影響があるか」という質問に、76%が「人材流出・人手不足」と答えているのだ。熊本県商工会議所の担当者が言う。

「TSMCは大卒新入社員の初任給が28万円と聞きます。地元企業に比べ3割高くとても採用で太刀打ちできません。人手不足が続くなかで今後、さらに地元企業の人材確保は厳しくなってくる」

 東京商工リサーチ熊本支店の瀬戸政規支店長もこう述べる。

「地元企業は採用を増やし、新入社員10人の採用を予定しても5人しか集まらない状態。中途採用でも平均年収400万円だったのが600万円に上げて募集しています。人手不足を抱える企業が増え、派遣や契約社員でしのぐ企業が増えてきています」

 世界的半導体企業の進出は、すでに不動産バブルや物価高騰も生じさせている。こうした九州での状況は、半導体メーカー「ラピダス」が最先端半導体工場の建設を進める北海道千歳市でも出始めている。地方経済が半導体工場の進出で大きく変わり始めている。

(ジャーナリスト・木野活明)

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