「外交の岸田」は幻に…政権浮揚かけた演出「レーダー照射問題」も玉虫色決着
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月5日 9時26分
握手する木原防衛相(左)と申源湜国防相(C)共同通信社
このところ急速に雪解けに向かっている日韓関係が、何やら前進したようだ。対中包囲網の強化にシャカリキな米国主導で関係改善が図られる中、のどに刺さった小骨のようになっていた「レーダー照射問題」が決着をみた。舞台は恒例のアジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアローグ)。1日の日韓防衛相会談で再発防止策に合意したのだが、政権浮揚に焦る岸田首相は自分の手で仕上げ、“成果”を喧伝するハラだったという。ナンセンスの極みだ。
■安倍時代から4年放置
コトが起きたのは、2018年12月だった。元徴用工訴訟をめぐる韓国大法院判決にブチ切れた安倍晋三首相と文在寅大統領が火花を散らしているところに、韓国海軍駆逐艦が海上自衛隊P1哨戒機に火器管制レーダーを照射。砲弾やミサイル発射に先立って実施する危険行為に日本側は激怒し、韓国側は否定し続けたため、日韓関係は戦後最悪まで冷え込んでしまう。安倍と文在寅の相性の悪さもあいまって、4年にわたってたなざらしになっていた。
局面が変わったのは、保守派の尹錫悦政権が発足した22年5月。日韓双方の同盟国である米国のモーレツな圧力により、2国間の軍事協力強化のさなかにある。
「尹錫悦大統領は23年3月に元徴用工問題の解決策を打ち出し、直後の初来日ではシャトル外交の再開など、関係正常化で岸田総理と合意しました。その先はとんとん拍子で、機能不全に陥っていたGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の運用を正常化し、日本は対韓輸出規制を解除。先月末にソウルで開催された日中韓首脳会談の流れで開いた日韓首脳会談で、レーダー照射問題をめぐる合意を華々しく発表するシナリオも検討された。ですが、岸田総理も尹大統領も支持率低迷から抜け出せず、ひとつ間違えば土下座外交のそしりを受けるリスクもある。そうした事情もあって、格下の防衛相会談に先送りされた」(外交事情通)
もっともだ。合意とやらは、真っ向から食い違う事実認定を棚上げ。歴史に学ばず、また玉虫色の決着をつけたのだから、誰の手柄にもなりやしないし、禍根を残しかねない。バカな大将、敵より怖い。
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