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プーチン大統領がパリ大会後に“独自世界規模大会開催”の絵空事…愛憎相半ばする五輪への思い

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月7日 7時23分

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ロシアのプーチン大統領(C)ロイター

【7.26パリ大会開幕 徹底!実践五輪批判】#6

 プーチン大統領はパリ五輪後の9月に、ロシアで「フレンドシップゲームズ」を開催すると意気軒高である。オリンピックは好きだが、国際オリンピック委員会(IOC)が憎いプーチンのアンビバレンス(愛憎併存)が顕現したとみる。

 柔道家であり、オリンピックファンであったプーチンは講道館柔道から名誉6段を授かり、IOCからは最高位勲章オリンピックオーダー金賞を賜っている。ウクライナに侵攻し、オリンピック休戦を破った廉で後者は剥奪されたが、五輪愛がくすぶっているようだ。

 パリ五輪への参加について、IOCがロシアとベラルーシの選手に中立な個人としての参加の道を開いたが、国名も国旗も国歌も使えないと聞いたロシア大統領は、「IOCは五輪創始者クーベルタンの初心を歪曲している。スポーツは単に記録を樹立することが目的ではない。人々を結びつけることでもある。オリンピック運動はこの役割を放棄した」と痛烈に批判し、2022年当初はブリックス(BRICS)中心の国際競技会を提唱していたが、昨年末には全世界規模の大会を目指し、自らが真の五輪精神継承者だと言わんばかりの行動に出た。

■1984年ロス五輪時にも…

 思い起こせば、80年モスクワ五輪ボイコットの報復として、84年ロス五輪への参加を拒否したソ連など社会主義国9カ国が開催したのも「フレンドシップゲームズ」と呼ばれた。ロス五輪と同時期の分散開催であったので約50カ国の参加で終わったが、今回はパリ五輪後にロシア1国で開催し、もっと多くの参加国を狙っている。各国五輪委員会などのスポーツルートは使えないため、政府代表を派遣するなど集中的な外交攻勢をしているという。

 しかし、プーチンの理想とする五輪をひもといていくと結局、政治的につながれる国家とのスポーツ親善大会を行うことになる。彼にとってスポーツは国家のものであり、国と国とが競い合うものだ。この発想である限り、スポーツで平和を築くという五輪理念は絵空事となる。

 オリンピック憲章では「オリンピック競技大会は、選手間の競争であり、国家間の競争ではない」。政治的に仲の良い国同士で競争したところで、生まれるものは日常的な幸福でしかないのではないか。思想も政治体制も経済的格差も宗教も違うもの同士が、スポーツという共通のルールの下に競い合うために集うからこそ、競争が「違いを超える」というムーブメントになり、それが友好親善につながる。それ故に国家が、その未来の親交を担う自国の選手を育てる土壌として意味を持つ。オリンピズムの肯定できるナショナリズムの唯一のあり方である。

 IOCは「スポーツの政治化」に警鐘を鳴らすが、このオリンピズムの機微を理解しないプーチンのフレンドシップゲームズは五輪を凌駕できない。そして、プーチンの五輪へのアンビバレンスも癒えないだろう。

(春日良一/五輪アナリスト)

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