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追悼・中尾彬さん 無音で「ひ・さ・し・ぶ・り」と一音ずつ口の形を変えて挨拶をされた(本多正識)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月8日 9時26分

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中尾彬さん(C)日刊ゲンダイ

【お笑い界 偉人・奇人・変人伝】#195

【追悼】中尾彬さんの巻

  ◇  ◇  ◇

 先月16日にお亡くなりになった中尾彬さんとは、トーク番組などで20回以上お世話になりました。

 初めてお会いしたのは20年以上前。口数こそ多くはありませんでしたが、ここというところで短くバッサリ斬る姿はまさに「役どころを心得ている」という感じでした。

「(奥さまの叔父にあたる古今亭)志ん朝師匠ともお話しになることはあるんですか?」と伺うと、当時は「あんまりないんだよな。話したいんだけどね」と語り、志ん朝師匠が亡くなられた後の出演の時には、中尾さんの方から寂しそうなお顔で「(志ん朝さんと)もっと話したかったね……」とポツリとひとこと言って、私の肩を強く掴まれたことが今でも印象に残っています。

 中尾さんは料理も上手で、流木の板をお皿代わりにして、「僕が生まれ育った木更津の漁師の酒のさかな」をご自分の包丁を持参して作ってくださいました。

(トミーズ)雅くんが「趣味がめっちゃ多いですけど、何してはる時が一番楽しいですか?」と伺うと「“居酒屋しの”でメシを食ってる時かな……」「自分の店ですか?」「家で晩飯を食べる時は、僕が和紙に“お品書き”を書いて、そのとおりの料理をかみさんが作ってくれて2~3時間かけて食べるんだよ。それをうちでは“居酒屋しの”って呼んでるんだ」「ものすごいノロケ!」「ホントだからしょうがないじゃないか……」とちょっと照れくさそうに、本当に幸せそうな顔で話しておられました。一見、「こわもて」の印象ですが、気さくでスタッフにもよく声をかけ、大事にしてくださるすてきな方でした。

 最後にお会いしたのは、コロナが流行する前でした。新幹線の中で東京に到着した時に出口に向かっていると数メートル先に中尾さんが。長らくお会いしていないので覚えてらっしゃらないだろうなと思いながらも、目が合ったので、キャップを脱いで小さく一礼すると、最初は「誰だ?」という顔をされていらしたのが、「おぅ~!」という声にならない顔をされて、無音で「ひ・さ・し・ぶ・り」と一音ずつ口の形を変えて挨拶をしてくださいました。

 そこにはやさしい、いつもの中尾さん。天国から大好きな奥さまを見守っていらっしゃることでしょう。

(本多正識/漫才作家)

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