岐路に立つTVドラマ…「ふてほど」ギャラクシー賞2部門受賞と「SHOGUN 将軍」世界ヒットの暗示(桧山珠美)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月9日 9時26分
![岐路に立つTVドラマ…「ふてほど」ギャラクシー賞2部門受賞と「SHOGUN 将軍」世界ヒットの暗示(桧山珠美)](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/gendainet/gendainet_1048363_0-small.jpg)
ギャラクシー賞贈賞式(左から磯山晶、阿部サダヲ、金子文紀)/(C)日刊ゲンダイ
【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
先日、行われた「第61回ギャラクシー賞」贈賞式で、テレビ部門「特別賞」、そして視聴者から最も愛された番組に贈られる「マイベストTV 第18回グランプリ」をダブル受賞したのがTBS系ドラマ「不適切にもほどがある!」だった。
1986年に生きる昭和の体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)が2024年にタイムスリップ。昭和、令和を行き来する中でコンプライアンス、ハラスメントに過敏な令和のおかしさや昭和の無法っぷりを浮き彫りにする社会派コメディードラマとして話題をさらった作品だ。
磯山晶プロデューサーや演出の金子文紀、サプライズゲストとして主演の阿部が登壇し、喜びを語っていた。印象に残ったのは磯山Pの「とにかく守りに入らなくてよかったなと今日改めて思いました」という言葉。宮藤官九郎の脚本を読んで「『おい、起きろブス! 盛りのついたメスゴリラ!』という最初のセリフを読んでドキドキし、宮藤さんのこの攻めの姿勢を大事にしなきゃいけないと思った」と語っていた。
舞台をテレビ局にしたことで「こたつ記事」や「番組を見ていないアンチ」に振り回され、身動きがとれなくなっているテレビの現状を暴いた意義も大きかった。
残念なことに、この上半期は「ふてほど」以上に話題になったドラマはない。昨今、ドラマの数は増える一方で、スタートする前は番宣などで話題にはなるものの、いざ始まってみたら、ほとんど見られていないものばかり。嘆かわしい。
話題になるのは配信ドラマばかり
とはいえ、ドラマが見られていないかというとそうではなく、最近、話題になるのはテレビドラマよりもむしろ配信ドラマだ。この上期でいえばディズニープラスで独占配信中の「SHOGUN 将軍」だろう。原作はジェームズ・クラヴェルの同名小説で「トップガン マーヴェリック」の原案者が製作総指揮、真田広之(写真)がプロデュース、主演を務める。
とにかく壮大なスケールで臨場感もさることながらセットや衣装、甲冑や鎧、小道具の細部にまで忠実に再現。長きにわたって日本の時代劇を支えてきた職人や経験豊かなスタッフを投入、妥協なしに描かれた「ホンモノの日本」がそこにある。
制作費削減で合戦シーンもショボいチマチマ時代劇に慣らされているからか、これまでに見たこともない映像の迫力に圧倒されてしまった。吉井虎永役の真田広之の安定感はいうまでもなく所作の美しさはもちろん、普段より低めの声で話すセリフにも迫力があった。
真田はハリウッドに拠点を移して以来、映画やドラマでの誤った日本の描かれ方に対し、物申してきたという。そのたまもののようなドラマだ。
「将軍」は、世界中で大ヒット、日本でも大きな話題となっている。昨年の「サンクチュアリ-聖域-」や今年の「忍びの家」と話題になるのは配信ドラマばかり。ドラマ制作者はまさに岐路に立たされている。
(桧山珠美/コラムニスト)
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