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介護現場の崩壊で避けられぬ経済的損失…賃上げ財源乏しく人材流出も止まらず倒産急増

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月9日 9時26分

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介護を受けられなくなるケースが増える

 介護業界が危機に直面している。東京商工リサーチが7日発表した調査結果によると、「介護事業者(老人福祉・介護事業)」の倒産が急増。今年は先月までに計72件(前年同期比75.6%増)に達し、あと1カ月を待たず上半期の過去最多だった2020年の58件をすでに上回った。

 介護業界は深刻な人手不足に頭を悩ませている。他業種と比較しても賃金が低く、人材流出に歯止めがかからない中、賃上げの波にも乗り切れていない。中小企業を対象にした日本商工会議所の調査(5日発表)では、「医療・介護・看護業」の今年度の賃上げ率は、正社員で2.19%と全体平均の3.62%を大きく下回っている。

 これでは採用難と離職に歯止めがかからない。さらに追い打ちをかけているのが円安・物価高だ。光熱費や燃料、介護用品などの値上げにより経営が逼迫し、倒産が相次いでいるのだ。

 介護従事者の労働組合「日本介護クラフトユニオン」の村上久美子副会長は、業界の苦しい状況をこう明かす。

「主な収入源が介護報酬という国が定めた制度である以上、企業努力だけでは限界があります。賃上げを実践しようにも財源がなく、他の業種との賃金格差は開くいっぽうです。国にはしかるべき予算を投入してもらいたい」

■2030年には9兆円超

 厚労省の推計によると、総人口に占める65歳以上人口の割合は、2040年には約35%になる。日本はこれから超高齢社会を迎えるというのに、介護業界は崩壊し始めている。

「人手不足により、すでに介護を必要とする人が必要な時にサービスを受けられなくなりつつあります。介護難民が続出しかねない現状を見過ごせば、介護のため家族が仕事に支障をきたしたり、離職せざるを得なくなったりと、社会の大きな損失につながります」(村上久美子氏)

 経産省は、働きながら親などを介護する「ビジネスケアラー」について、労働生産性の低下などによる経済的損失が2030年には9兆円超に及ぶと推計。このままだと、さらに損失額が膨らみかねない。

 介護業界の危機を放置することは、日本経済全体にも大きな支障を及ぼす。

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