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六月大歌舞伎は「菊五郎2人制」に「6代目時蔵」誕生と見どころ満載! 中村獅童の子供たちの初舞台にも注目

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月12日 9時26分

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歌舞伎座(C)日刊ゲンダイ

 来年5月に、尾上菊之助が8代目尾上菊五郎を襲名することが発表になった。一方、当代の菊五郎は他の名になるのではなく、7代目菊五郎のままだという。前例のない「2人制」になるが、これはいいことだ。

 たとえば昨年亡くなった2代目猿翁は、猿翁としてはほとんど舞台に立っていないので、観客にとっては、永遠に「3代目猿之助」である。しかし、公の場では、過去の業績もすべて「2代目猿翁」として書かなければならない。これは書く方としても違和感がある。同時代に同名が2人いても、「何代目」とつければ混乱はないだろう。

 さて、今月の歌舞伎座は「萬屋」一門の父子三代の襲名や初舞台。5代目時蔵が新しく作った「萬壽」を名乗り、その長男・梅枝が6代目時蔵に、その長男が5代目梅枝を襲名する。そして、中村獅童の子、陽喜と夏幹が「魚屋宗五郎」で初舞台。

 6代目時蔵の襲名披露演目は昼の部の「妹背山婦女庭訓」。お三輪は女形のなかでは大役なので、襲名披露としてはふさわしいのだが、いじめられ、最後は殺される話なので、うまければうまいほど、見ていてつらくなる。もっと華やかなものがなかったのだろうか。劇中口上の発声は仁左衛門で、女形として登場し、そのことで笑わせながら、温かく紹介した。

 夜の部「山姥」は萬壽と孫の梅枝の襲名披露。こちらは明朗な舞踊劇で、梅枝の門出をにぎやかに祝う。劇中口上は菊五郎の発声。梅枝は、昼も娘役で出ていて、夜は元気な男子・怪童丸なので、対照的な2つの姿を見せ、将来を期待させた。

 獅童は昼と夜それぞれで主役をつとめているが、昼の部の「上州土産百両首」が圧倒的にいい。もっともこれは、相手役の菊之助が見事だからで、それにひきずられて、獅童も「情」をうまく出せている。最近の菊之助は主役を演じられる立場でありながら、あえて相手役・敵役にまわっている。今回も、人はよいが頭が少し弱い役で、わざとらしくなりがちなところを、ナチュラルに演じている。

 一連の非・主役路線は、主役をやれる自信のあらわれでもあるが、たしかに「いまの歌舞伎」に欠かせない役者になってきた。どういう菊五郎になるのか、楽しみだ。

「魚屋宗五郎」での獅童はこの悲劇をドタバタ劇にしてしまっている。それでも芝居として成立しているのは、おはまを演じる七之助のおかげだ。萬壽から習ったと語っているが、本当に萬壽が出ているのかと思うほど。それでいて、後半になると、七之助ならではの軽やかさで、芝居全体をどうにか締めていた。獅童は昼夜とも、共演者に助けられた。

(作家・中川右介)

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