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WECARSを立ち上げた伊藤忠の狙いは自動車アフターマーケットの強化にあり(有森隆)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月13日 9時26分

WECARSを立ち上げた伊藤忠の狙いは自動車アフターマーケットの強化にあり(有森隆)

ビッグモーターの主要事業を承継した新会社「WECARS」が発足、会見する田中慎二郎社長(中央)ら(C)共同通信社

【企業深層研究】WECARS(下)

 企業再生ファンドのジェイ・ウィル・パートナーズ(JWP)とは何者か。

 外資をまったく入れず、日本政策投資銀行や年金基金、大手金融機関といった国内資金だけで組成する企業再生ファンドの先駆者である。投資した国内企業の再生や成長に基づくリターンを国内の投資家に還元する。再生の手法は投資先企業に役職員を派遣し、既存の役職員と共に再生を目指す、日本的な穏当なやり方を得意とする。

 佐藤雅典社長は1986年一橋大学経済学部卒業後、日本長期信用銀行(現SBI新生銀行)に入行。ニューヨーク支店で不良債権などローン流動化ビジネスに従事。98年に経営破綻した長銀からゴールドマン・サックス証券に転じ、ここで不良債権処理や企業再生ビジネスを担当したのちに独立。2003年4月、ゴールドマンで企業再生を手がけていたメンバーと共にJWPを設立した。

 22年11月に支援を決めた富山市に本社を置く後発医薬品大手の日医工は品質不正を告発され、21年、富山県から業務停止命令を受けた。22年12月、事業再生ADRによる再生手続きに入った。

 この時、JWPと医薬品卸大手のメディパルホールディングスがスポンサーになり、両社が出資する合同会社が200億円を拠出。日医工は23年3月、上場廃止。合同会社の完全子会社となった。JWPが議決権の80%を握っており、メディパルを伊藤忠に置き換えれば、ビッグモーター(BM)の買収と同じ構図になる。

 伊藤忠がBMを買収した狙いはどこにあるのか。

 BMの主要事業を継承した新会社WECARS(ウィーカーズ)の田中慎二郎社長は、朝日新聞のインタビュー(5月24日付朝刊)で、「国内トップクラスの(整備工場の)設備が(買収の)決め手の一つだった」と語っている。

 この発言は伊藤忠の狙いが整備や中古車、部品・用品、保険など自動車アフターマーケットの事業拡大にあることを端的に示している。

 伊藤忠と伊藤忠エネクスは23年8月、リース車両のメンテナンス管理事業のナルネットコミュニケーションズ(愛知県春日井市)に、特別目的会社を通じて36%出資した。ナルネットは全国1万カ所を超える整備工場と提携。数万台の管理車両を持ち、詳細な整備データを持っているのが、伊藤忠には魅力的だった。

 矢野経済研究所によると、自動車アフターマーケットの市場規模は約20兆円(22年)と大きく、景気に左右される新車販売と違って安定的なのが特徴。とりわけ、電気自動車(EV)時代の到来でビジネスチャンスは大きくなった。新会社WECARSが加わることで、アフター領域で戦力を大幅に強化できる。

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