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映画「フィリップ」監督インタビュー「感情が凍り付いた男の孤独にフォーカスしています」

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月15日 9時26分

映画「フィリップ」監督インタビュー「感情が凍り付いた男の孤独にフォーカスしています」

ミハウ・クフィェチンスキ監督(提供写真)

 現代のヒーローなのか、アンチヒーローなのか──。ポーランドで、長く発禁となっていた原作の映画化「フィリップ」が賛否両論である。第2次大戦下のドイツで、主人公フィリップはユダヤ人の出自を隠しつつ、ナチス上流階級の女たちを次々に籠絡していく。屈折した復讐劇。

「もっとポジティブに評価されていいキャラクターだと思う」とミハウ・クフィェチンスキ監督(73)はこう言う。

「まわりは自分の親しい人まで殺した敵だらけ。出生も明かせず、怒りと孤独感にさいなまれている。現在のウクライナ移民たちと似ているし、社会から疎外されつらい思いをしている人は日本にもたくさんいるでしょう。そんな背景を考えれば、ぐっと身近に感じられませんか」

 ──作品を通じて描きたかったのは?

「原作を読み、まさに今の世界がこういうふうだと思ったんです。愛が欠如し、その必要性、憧れはありますけど、その感情を深めていくことすらできない。ネットやSNSの普及によって、世界を深く見る、考えることができなくなっている現代人たち。簡単に洗脳されてしまいそうで、怖くもある。モラル、道徳的観点も必要ですが、それらを外して、映画を見てもらいたいと思います」

 ──孤独な主人公は映画「ジョーカー」のような暴発にかられますね。

「目の前で、殺される必要のない人が殺されたりしている。とてもあってはならないシチュエーションに生きているのです。各国で上映会をすると、私たちのもとに集まって、個人的な話をする観客の姿がありました。移民だけじゃない。彼らは感謝を伝えてくれたんです。自分がひとりじゃないんだ、苦しみに喘いでいるのは。そう思えたというんです」

 ──それが作品のメッセージなのでしょうか?

「苦境やトラウマから、感情が凍り付いた男の孤独にフォーカスしています。社会に身を潜め、あらがい、何とか生き永らえようとしますけど、どうにもならない更なる苦境に喘ぎます。そして、彼は自分が目指していた感情を自ら破壊することすら迫られる。もともとフィリップはそういう人間ではなく、冷酷でシニカルな人間に狂わされてしまっているんです。そのとき、どうするのか、そのような状況下で何を感じるか、向き合ってみてください」

 ──フィリップはヒーローなのですか、それとも。

「ヒーローですよ。現代なら、おそらく心理療法士のもとに通い詰めているでしょうけれども」 (聞き手=長昭彦)

■21日(金)から新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国公開。R15+指定。

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