今春闘は33年ぶり高水準だったが…大企業の賃金は上がっていなかった? データは語る
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月18日 9時26分
春闘の賃上げは関係ない?(C)日刊ゲンダイ
経団連が5月20日に発表した今年度の大手企業の春闘の賃上げは5.58%、労働組合の中央組織・連合は5.08%といずれも33年ぶりの高水準を記録。組合員300人未満の中小企業でも賃上げ率は4.45%と2013年以来で最も高くなった。一方、日本商工会議所が今年初めて行った賃上げ率調査の結果は3.62%。
こうした数字から市場関係者の間で、大手企業と中小企業の賃上げ格差が拡大しているとする声が多く聞こえる。だが、大手と中小の賃上げ幅の格差が縮小していることを裏付けるデータが一方にある。
厚生労働省が発表している「賃金構造基本統計調査」だ。賃金の推移を性別、学歴、企業規模、産業、役職などそれぞれ別個に調査したものだ。
24年3月27日に発表された「23年賃金構造基本統計調査」(23年6月分の賃金等につき同年7月調査)によると、企業規模、年齢階級別賃金は、大企業(常用労働者1000人以上)34万6000円で対前年比0.7%のマイナス。中企業(同100~999人)は31万1400円で、同2.8%のプラス。小企業(10~99人)は29万4000円と同3.3%のプラスだ。
昨年度は賃上げ機運が高まり、大手・中小とも30年ぶりの高水準となったのだが、同調査では大手企業の賃金は前年比減少しているのだ。一方、中小企業の賃金はプラスだ。
さらに、企業規模間の賃金格差を見ると、大企業を100として中企業は前年の87から90へ、また小企業も同81.7から85へと格差は縮小している。大企業の賃金が縮小している理由を同省賃金福祉統計室の担当者に聞いた。
「調査対象に従業員数が増えた非正規社員が入っていること、また給与の上げ幅が小さい中高年の従業員が多いことが給与アップを抑えています。従って、大企業と中小企業の給与格差は縮小してきているといっていいと思います」
第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストがこう説明する。
「春闘の賃上げは企業の組合員が対象ですが実際の賃金は春闘に関係なく決まる人の影響が圧倒的に大きいんです。従って、春闘で賃上げ率が高かった大手企業の昨年の賃金は実際は下がっています。とくに30代後半から50代前半の賃金が足を引っ張っています。厚労省の調査でも小企業の方が賃金上昇率が高いため、大手と中小の賃金水準の差は縮小しているということです」
組合員数は昨年(6月時点)で前年比5万5000人減少した。また非正規従業員もこの2年急増している。春闘の賃上げ率だけが給与の実態ではないのだ。
(ジャーナリスト・木野活明)
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