MLBで「ロボット審判」の導入が遅れている本当の理由…賭博が絡む構造的問題の根は深い(鈴村裕輔)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月19日 9時26分
2019年に導入されたコンピューター判定(C)AP=共同
【メジャーリーグ通信】
現在の大リーグ機構が進める施策の一つに、収入源の多角化と収益力の向上がある。
この事実は、今年5月にコミッショナーのロブ・マンフレッドが大リーグにおける、いわゆるロボット審判の導入の時期を、当初予定していた2025年ではなく26年以降に延期する方針を示唆した意味を理解するために重要だ。
機構が将来の大リーグへの導入に備え、独立リーグと提携して試験的にロボット審判を採用したのは2019年のことだった。これは、連邦最高裁が連邦法によるスポーツ賭博の禁止を解除することを決定した翌年に当たる。
1919年のワールドシリーズで起きたブラックソックス事件によって信用を失墜させた球界は、1989年に野球賭博を行ったことが明らかになったピート・ローズを永久追放にするなど、賭博に対し厳格な態度で臨んできた。連邦法がスポーツ賭博を違憲としたことは、機構の政策を後押しするものでもあった。
しかし、スポーツ賭博が全国的に解禁された以上、他のプロスポーツが賭博の対象となることを解禁した場合、従来の方針を維持することは大リーグだけが取り残されることを意味する。
誤審も野球の一部であるというこれまでの態度を変更。判定に際してより誤りが少ないと思われる方法を導入することは、野球から誤審という偶然の要素を排除し、より公平に試合が運営されていることを担保して賭けの対象としての魅力を高めるためにも重要な措置だった。
そして、自動的に判定する場合に人間よりも優れた結果を残すことが出来なければ、判定の置き換えを正当化することができず、直接の影響を受ける選手たちの理解も得られない。
何より、当初は2024年からの導入が掲げられていたにもかかわらず、さらに延期することになるのだから、ロボット審判が抱える構造的な問題の根深さが分かる。
拙速と巧遅のいずれを選ぶかと問われれば、多くの場合、前者を選んできたのがマンフレッドである。
だが、不完全な仕組みを導入して賭博の対象としての野球の公平性が疑われるようになれば、ロボット審判の早期導入で得られる利益よりも損害が上回ることになりかねない。
それだけに、ロボット審判の精度が向上すれば、機構は躊躇なく新制度導入に動くだろう。
(鈴村裕輔/野球文化学会会長・名城大准教授)
◇ ◇ ◇
そんなメジャーリーグを主戦場にする大谷だが、日米での報じられ方には大きな違いがある。日本とはまったく異なり、米メディアによる近頃の大谷の評価は「いまひとつ」なのだ。いったいなぜか。
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