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業界のトップランナーTOPPANホールディングスが社名から「印刷」を外した理由

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月19日 9時26分

写真

CMで大活躍(俳優の大泉洋さん)/(C)日刊ゲンダイ

【企業深層研究】

 TOPPANホールディングス(上)

  ◇  ◇  ◇

 凸版印刷と大日本印刷。印刷業界の2強であり、切磋琢磨する関係だ。設立は凸版の1908年に対し、大日本は1894年。ともに100年を超える歴史を誇る。1949年5月に揃って上場した。

 売上高は凸版が1兆6782億円、大日本が1兆4248億円と2000億円ほど凸版がリードするが、純利益は凸版743億円、大日本1109億円と逆転する(ともに2024年3月期)。時価総額はともに1兆4000億円台で拮抗している(6月14日時点)。

 いずれにしても、日本の印刷業界はこの2社が牽引してきた。

 と、ここまで「凸版印刷」と続けてきたが、現在、この社名は存在しない。昨年10月に持ち株会社制に移行し、TOPPANホールディングスの下に事業会社のTOPPANがぶら下がる形となった。その両社ともに社名から「印刷」を外している。昨年来、俳優の大泉洋(写真)と成田凌が軽妙なやりとりをしたあと、「TOPPA!!!TOPPAN」と続くテレビCMが頻繁に流れていた。これは社名から「印刷」を外したことを周知徹底するためのCMだった。

 前述のようにTOPPANは日本印刷業界のトップランナーだ。にもかかわらず「印刷」の2文字を捨てた。そのこと自体が印刷業界の置かれた状況を雄弁に物語る。

 日本の出版販売額のピークは1996年。この年、雑誌が1兆5633億円、書籍が1兆931億円、計2兆6564億円を売り上げた。しかしそこからは右肩下がり。昨年は雑誌4418億円、書籍6194億円(いずれも紙出版物)と市場規模は半分以下となった。

 当然、書籍・雑誌印刷の需要も縮小する。かつて印刷会社にとって、書籍・雑誌印刷は最大の稼ぎ頭だった。営業部門の花形もこの分野で、担当者は出版社に張り付いて仕事を受注するだけでなく、時には編集作業も手伝っていた。

 それが今では、花形営業はそれ以外の部門に移っている。

 それを証明するのがセグメントごとの業績だ。

 TOPPANは、情報コミュニケーション事業、生活・産業事業、エレクトロニクス事業の3つに分かれる。出版印刷も含まれる情報コミュニケーション事業は全売上高の53%を占める。これだけを見ると出版印刷がいまだに主力のように思える。しかし印刷業界全体で見ても、出版印刷比率は16%程度であり、それはTOPPANにも当てはまる。つまり出版印刷はすでにマイナー事業となりつつある。

 それに代わるのがエレクトロニクス事業。売上高は全体の15%前後だが、営業利益の半分近くを稼ぎ出す。同事業は、ディスプレー関連や半導体関連の電子部材を提供する事業。そこには印刷で培った技術が使われているが、従来の印刷業とは全く違う。

 このようにTOPPANの業態は以前とは大きく変わっている。活字印刷を想起させる社名を変えるのも当然だ。その上で、TOPPANは何を目指すのか。 =つづく

(真保紀一郎/経済ジャーナリスト)

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