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IOCは命がけで戦争終結を訴えたロシア人自転車選手の勇気に報いなければいけない

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月21日 9時26分

IOCは命がけで戦争終結を訴えたロシア人自転車選手の勇気に報いなければいけない

「私はただ平和を望んでいる」と表明したウラソフ選手(左) (C)LaPress/共同イメージズ

【7.26パリ大会開幕 徹底!実践五輪批判】#8

 国際オリンピック委員会(IOC)は6月15日にパリ五輪に参加できる個人中立選手(AIN)を初めて発表した。

 IOCは2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻後、五輪休戦を破ったロシアとベラルーシを世界のスポーツ界から追放していたが、選手は尊重されるべきであり、国家の罪を選手に負わせるべきでないという考えがあった。

 標準記録や予選の条件を満たし、所属する国際競技連盟(IF)の審査をパスし、最終的にIOCが設けた「個人中立選手資格審査会」が承認した選手は、「中立の旗」の下でAINとしてパリ五輪参加ができる。ウクライナでの戦争を積極的に支援していないことと自国の軍隊とのつながりがないことを証明するために、IFとIOCのダブルチェックを受ける。

 その審査を通過した選手の第1次リストがIOC理事会終了後のタイミングで公表されたのだが、その数はロシア選手14人、ベラルーシ選手11人。驚くべき少なさだ。参加競技種目も自転車のロード種目、体操のトランポリン、ウエートリフティング、そしてレスリングだけである。世界陸連は両国選手の参加を全面的に拒否しており、その他のIFも両国選手の復帰に手間取っていることもあるが、最終リストでもせいぜい今の2倍になる程度と思われる。東京五輪2020ではロシア330人、ベラルーシ104人だった。

 スポーツ大国ロシアがいないこの現実を突きつけられると五輪休戦を破った負債はロシアやベラルーシだけでなく、IOCにとっても大きいと思わざるを得ない。彼らを裁くだけでは、世界平和構築の機関になれない。

 折しも16日、ウクライナが提唱する和平案を話し合う「平和サミット」が共同声明を採択し閉幕したが、約100カ国のうち10カ国が賛成しなかった。ロシアが招かれてない状況での和平は不可能である。いかにロシアを取り込めるか。国を超えてスポーツで結びつき友好親善をつなぐ。それはオリンピックの初心ではないか。少しでも多くのロシア選手の参加が望まれる。

 AINの選手はセーヌ川での開会式にも参加できないというが、「私はただ平和を望んでいる。可能な限り早く戦争をやめてほしい」と表明したサイクリストのアレクサンドル・ウラソフの勇気にIOCは報いるべきだ。彼はAINとして認められている。

 私がかつて「戦争反対宣言をしたロシア選手の参加を認めるように」IOCに提案した時、「彼らの身に危険が及ぶ」と返されたものだ。確かに、パリ五輪参加表明は命がけでもある。審査をパスしてもボイコットする可能性のあるロシア選手をとどめるためにも、せめて開会式入場行進参加を認めるべきだ。

(春日良一/五輪アナリスト)

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